どれほど優れた技術や製品であっても、世の中に知られなければ存在しないのと同じである。笹木郁乃氏は、PRを行う中でその事実に気付き、広報の力で数々の実績を打ち立ててきた。過去には、在籍した株式会社エアウィーヴを年商1億円から115億円規模の急成長に貢献し、愛知ドビー株式会社でも「バーミキュラ」を異例の大ヒット商品への押し上げに尽力した。
現在は、株式会社LITA代表として数多くの企業支援や経営者への指導を通じ、「日本一、社会問題をPRの力で解決する企業」を目指して邁進している。直近2年間でPR代行事業の月次売上が825パーセント成長、新規顧客は紹介とインバウンドが100パーセント、PR人員比率98パーセントというLITAの強みの要諦について、笹木氏に聞いた。
企業サイト:https://lita-pr.com
目次
創業前に笹木氏が経験したエアウィーヴ時代の挫折と成功
── 笹木代表はもともとエンジニアとしてキャリアをスタートしています。なぜPRの道を選んだのですか?
笹木氏(以下、敬称略) 私は山形大学の工学部を首席で卒業し、アイシン精機で研究開発の仕事をしていました。エンジニアとして論理的に物事を組み立て、実験や研究を重ねていました。
その後「社会や人に、ダイレクトに変化を与える挑戦がしたい」と研究者を辞めると決意し、創業期の株式会社エアウィーヴに正社員一人目として転職し、PRの道へと進んでいきました。
── 安定した大手企業から、当時まだ無名だったエアウィーヴへ転職された決め手は何だったのでしょうか?
笹木 正直にお話しすると、私の転職活動は挫折の連続で最終的に受かったのがエアウィーヴだけだったという事実があります。もともと研究職で、人前でうまく話すようなタイプでもなく、一度キャリアに迷って転職を考えたものの自信はありませんでした。
自分の力で直接お客様に喜びを届けられる仕事に携わりたいという軸で何社も受けたのですが、なかなか採用されず苦しい日々が続きました。そんな中で受かったエアウィーヴの面接が、私の人生を劇的に変える出会いになったのです。
一般的な面接は候補者を評価する場ですが、当時の高岡本州社長は面接の場で「日本一のマットレスブランドを一緒につくろう」と壮大な夢を熱く語りかけてくれました。目標が見えなかった私の人生に大きなビジョンが急に降ってきて、とにかく心がワクワクしたのです。
絶対にこの会社に入って日本一にするという私の情熱と夢が伝わり、広報としての道が始まりました。
── 未経験からの広報担当として、どのようにして5年で年商1億円から115億円規模の成長に貢献したのですか?
笹木 入社最初の1年間は、うまくいかないことばかりでした。やり方もわからず、当時はプレスリリース配信サービスを使っての一斉配信に頼り切っていたのですが、それではメディアからまったく取材オファーが来なかったのです。
会社も赤字でこのままでは潰れてしまうという危機感の中、私は高岡社長の営業スタイルをPRの動き方へと取り入れました。高岡社長は、どれだけ失敗したとしてもまったくへこまずに打席に立ち続ける営業マインドの持ち主です。
打席に立ち続けることで成果を出す姿勢を参考に、私は配信サービスへの依存をやめ、メディアの方々に自ら直接電話をかけ、直接会いに行ってプレゼンを繰り返すという行動を始めたのです。
── 具体的にどのような変化が起きて、商品の露出へとつながっていったのでしょうか?
笹木 誰よりもエアウィーヴという会社とマットレスを愛し、絶対に日本一のブランドに広めたいという熱量が、対面や電話のコミュニケーションからメディアの方々にも伝わったのだと思います。
打席に立ち続ける決意で行動の数を増やし、施策を多く打っていくと、まずウェブメディアや地域の番組で記事になり始めました。その記事を見てくれた大きなメディアやテレビ番組からの取材オファーが連鎖的に増加していったのです。
本当に優れた商品という大前提に、諦めない熱量と圧倒的な行動の数が加わったことで、年商1億円だった会社は5年で115億円へと成長しました。社内ではカスタマーセンターの電話が鳴り止まず、稼働しないときもあった工場は生産が追いつかなくなるほどの変化が起きました。
広報が1人の力で営業マン何人分ものインパクトを社会に起こし、企業の売り上げをダイナミックに引き上げる。その強烈な結果と達成感を体験したことで、PRこそが私の天職だと確信しました。
LITAと一般的なPR会社との決定的な3つの違い
── PR代行の領域において、数多くの企業が他社からLITAへと依頼を変えています。一般的なPR会社とは何が決定的に違うのでしょうか?
笹木 一番驚かれるのは、毎月2件の取材獲得をコミットすると明言している点です。一般的なPR会社は、月に30社のメディアに情報配信するといった行動量を約束します。
しかし、経営者が求めているのは行動だけではなく結果です。自分たちで完全にコントロールすることが難しいメディアの世界で、あらかじめ取材獲得数を言い切るには強い覚悟が必要となります。私たちが結果を出し続けられるのは、明確な3つの仕組みがあるからです。
── その結果を生み出す3つの仕組みについて、具体的に教えてください。
笹木 まず1つ目は、定型的なプレスリリースの配信で済ませるのではなく、メディアごとに最適化した10ページほどにも及ぶ丁寧で緻密な独自企画書を作成することです。メディアの記者がどのような切り口の情報を社会に届けたいかを考え抜き、企画書を作り込みます。
2つ目は、一対一のアプローチを徹底することです。作った資料を一斉配信して終わらせず、担当者が電話やメール、対面でのコミュニケーションを重ね、記者一人ひとりと信頼関係を築いていきます。
そして3つ目が、1人当たりの担当社数を3〜4社に限定する集中支援です。一般的なPR会社では1人で10社から20社を担当しますが、私たちは社数を絞り込むことで、一社一社の強みや背景まで深く入り込み、丁寧な企画とプレゼンを実現させています。
── 1人で3社から4社に限定すると、会社の利益率に影響が出るのではないでしょうか?
笹木 そこに私たちの経営デザインの好循環があります。LITAのPR代行サービスは圧倒的な取材獲得の結果を出し、顧客満足度を徹底的に高めているからこそ、新規契約の100パーセントが口コミ紹介と向こうからのインバウンド問い合わせだけで成り立っているのです。
営業をこなす人員が不要なため、全社員の98パーセントをPR人員に充てることが可能になっています。リソースを最大化し、一対一のアプローチと企画書で結果を出し、ストック収益として継続していただく。この確実な成果主義こそが、クライアントから支持され続ける「LITA品質」の核心です。
PR代行事業月次売上825パーセント成長の背景の裏にある「選択と集中」
── 創業期から現在に至るまで、事業展開における「選択と集中」があったとうかがいました。
笹木 私はエアウィーヴやバーミキュラでの経験を経て独立し、フリーランスとして年商1億円ほどの規模まで1人で事業を順調に育てました。
しかし、それ以上は一人では見られない景色であり、1人で続けるのか、あるいは仲間を迎えてさらに大きな目標へ挑戦するのかという2択を迫られます。1人で同じ景色を見続ける人生はつまらないと感じ、日本一を目指して組織化へと踏み出しました。
── 組織として挑戦を拡大する中で、大きな方針転換を経験されたそうですね。
笹木 4、5年前は、すべての企業や人の可能性に広く貢献したいという思いから、PR代行事業だけでなく、PR塾や女性起業支援事業といった別の支援サービスも複数同時に立ち上げました。
しかし、組織の土台やリーダーが発展途上にある小さな会社で3つも4つも同時に事業を走らせたため、力と時間が分散してしまったのです。
お客さまを輝かせられないのは本末転倒だと猛省し、「PR代行事業」へ絞る決断をしました。
── その「選択と集中」は、会社にどのような成果をもたらしたのでしょうか?
笹木 事業をPR代行へと絞り込んで以降、直近2年間の月次対比で、PR代行事業の売上が月次売上825パーセント成長するという目覚ましい伸びを記録しました。本質的なクライアントの成功に注力した結果、顧客継続率が高まり、営業活動ゼロでのインバウンド成長基調が定着しました。
── 社名である「LITA(リタ)」に込めた経営哲学について教えてください。
笹木 PRは「利他の心」がないと絶対に成果が出ないビジネスです。面倒だからと配信サービスで一方通行の情報発信をしたり企画を諦めたりしては、メディアの心は動かせません。必ずこのお客さまに勝ってもらうんだ、という覚悟が必要です。
そして利他の心は、顧客に対してだけでなく、一緒に働く社員に対しても同じです。経営者が仲間である社員にリスペクトと利他の心を持って接することで、社員自身がやりがいを持って輝くことができます。疲れてしんどい思いをしている社員が、クライアントのために情熱を注ぐことはできません。
社員が輝いてこそ熱量がクライアントに伝播し、クライアントが輝くことで社会全体が良くなる。原点はすべて「利他の心」にあります。
未来へのビジョン「PRプロデューサー1000人計画」
── LITAが目指す長期的な展望とこれからの構想について教えてください。
笹木 私たちのミッションである「日本一、社会問題をPRの力で解決する企業になる」について、提供する質においては他社からの乗り換え実績や顧客の喜びの声から、実現できると自信が持てるようになりました。
一方で、日本のより多くの企業や社会問題を解決するには人員がまだ足りません。そこで現在50名の組織を、将来的には1000人のPRプロデューサーが集う集団へ成長させようと計画しています。
単に社員を1000人に増やすのではなく、1000人の大組織になっても、誰もが同じ未来を夢見て熱狂し、利他の心を共有している組織でありたいです。その力によって日本中の素晴らしい企業を輝かせ、「未常識を常識にする」社会変革を起こしていきたいと考えています。
── 自社の知名度や情報発信に課題を感じている経営者に、伝えたいことは何ですか?
笹木 私たちのメッセージとして、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズの「いくら素晴らしいものをつくっても、伝えなければないのと同じ」という言葉をお伝えしたいです。
世の中には素晴らしい技術や志を持ちながら、それを伝える手段を知らないために価値を届けられていない企業が本当にたくさんあります。広告はお金を払えばすぐに伝えることができますが、効果は一時的です。
一方で、PRを通じてメディアという第三者の客観的で信頼ある声として報じられた実績は、決して消えることなく、会社のブランドや信用という資産として蓄積されます。良いものをつくり社会の役に立ちたいと願う企業にこそ、自らの価値を発信する手段として、ぜひPRに挑戦してほしいと思います。
- 氏名
- 笹木郁乃(ささき いくの)
- 社名
- 株式会社LITA
- 役職
- 代表取締役・PRプロデューサー

