上場企業がかかわるM&Aが「変調」気味に推移している。M&Aの件数は過去最多ペースを維持する一方で、6月を境に取引金額のダウンが目立つ。8月まで3カ月連続で前年比減少となったうえ、月間1兆円ラインに届かないのも同じく3カ月連続だ。
前年は年間を通じて前年比マイナスは2度(2月、11月)だけで、1兆円割れも2カ月連続することがなかっただけに、秋以降の動向ががぜん注目される。
3カ月連続の前年比マイナスは3年ぶり
上場企業の適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。
2026年1~8月のM&A件数は累計955件と前年を101件、率にして約12%上回る。このペースが続けば、前年の年間1344件を超えて3年連続で最多更新が見込まれる。
月別の件数は昨年8月から13カ月連続で100件を超え、M&Aを通じた中核事業への集中や事業ポートフォリオの見直し、グローバル展開の強化などに向けた動きが活発化している。
一方、取引金額は昨年12月から5月まで過去最長の6カ月連続で月間1兆円を大きく上回る水準となった。ところが、6月8608億円となった後、7月4580億円、8月7102億円と、3カ月連続で月間1兆円を割り込み、前年比でもいずれもマイナスとなった。
3カ月連続で前年比マイナスは2024年5~7月以来、ほぼ3年ぶり。また、月間1兆円割れは昨年5度あったものの、翌月には戻し、連続することはなかった。
「5000億円」クラスは6月から姿を消す
1~8月の取引金額は前年比42%減の9兆5598億円。豊田自動織機をめぐる6兆円近い非公開化案件の発表(6月)があった前年に比べると、その反動で4割を超える大幅減少となったものの、4カ月を残して年間10兆円の大台乗せを目前にしており、トータルとして水準自体は高い。
実際、1~8月における取引金額100億円以上の案件数は前年100件に対し、今年は96件とさほど変わらない。ただ、5000億円クラスの超大型案件に絞ると、今年は6月を境に姿を消している。
月別の金額トップ案件は1月8200億円、2月6545億円、3月4907億円、4月3700億円、5月5509億円。以降は6月1916億円、7月1568億円、8月2223億円と、スケールの違いが顕著だ。
例えば、直近の8月は三菱電機とキリンホールディングスが各2000億円超の海外買収案件を発表した。三菱電機は2223億円を投じて、エネルギー管理・最適化ソフトウエア開発の米国PCIエナジーソリューションズを買収するが、同社のM&Aとして今回が最大規模となる。
ちなみに、昨年8月はどうだったかといえば、SOMPOホールディングスによる同業の米国損保買収、技術系人材サービス大手のテクノプロ・ホールディングスをめぐるMBO(経営陣による買収)がそれぞれ5000億円を超え、この2件だけで1兆円を優に突破した。
では9月に入ってはどうか。9日時点で、第一ライフグループがニュージーランド生保のフィデリティ・ライフを約596億円で買収すると発表した案件が最も大きい。