株式会社スーパーホテル

1989年設立の株式会社スーパーホテルは、「Natural, Organic, Smart」をコンセプトに国内外で約180店舗を展開する。2020年10月、コロナ禍のどん底で代表取締役社長に就任した山本健策氏は、逆境を「川底の掃除」の好機ととらえ、現場の細かな無駄を省くことで見事なV字回復を果たした。

同社は「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」の信念を掲げ、自己実現を支援する独自制度で従業員の高いモチベーションを維持している。さらに環境保全やAI活用、地方創生など次世代のホテルのあり方も追求。人口減少社会において、人的資本経営を軸に選ばれ続ける組織をどう築くのか、山本氏に聞いた。

山本健策(やまもと けんさく)──代表取締役社長
1976年、兵庫県生まれ。2000年に上智大学卒業後、旧みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(現在は株式会社みずほ銀行に統合)に入社。2002年、スーパーホテルに入社し、フロント営業から始めホテル主要部門を歴任。2017年にグループ会社の株式会社スーパー・コート、株式会社スタッフ満足の代表を務める。2019年にスーパー・コートで日本経営品質賞を受賞。2020年より現職。
株式会社スーパーホテル
1989年、設立。1996年の1号店開業以来、国内外で約180店舗の「ぐっすり眠れるサステナブルホテル」をチェーン展開し、土地有効活用コンサルティングも手掛ける。コンセプトに「Natural, Organic, Smart」を掲げ、科学的研究に基づく「ぐっすり眠れる」空間を提供し、高い顧客満足度を実現。「CO2実質ゼロ泊」などの環境保全や地域連携に取り組む。
企業サイト:https://www.superhotel.co.jp/

目次

  1. コロナ禍の逆境を「川底の掃除」ととらえV字回復へ
  2. 「ESなくしてCSなし」を社長も従業員も実感
  3. 「21世紀型」ホテルのあり方とは?
  4. 従業員のモチベーションを高める仕掛け
  5. 「地方創生」というホテルの新たな役割

コロナ禍の逆境を「川底の掃除」ととらえV字回復へ

── 2020年10月、宿泊業界が最大の逆境にあった時期、社長に就任しました。そのときの覚悟を教えてください。

山本氏(以下、敬称略) まさにどん底からの出発でした。しかし、底が深ければ山もまた高いと考え、非常に期待を持っていたという心情もあります。創業以来の赤字という状況でしたが、できることから一つずつコツコツと積み上げる決意をしました。

就任時に社員へ宣言したのは、「3年後には過去最高の売り上げと利益を出す」ということです。うつむいていては何も始まりません。全員が前を向いて力強く進めるよう、一丸となってコロナ禍を乗り越えることを宣言しました。

── 会長からバトンを引き継ぐタイミングとして、あえてこの時期を選んだ理由はあるのでしょうか?

山本 会長からは「その方が勉強になるだろう」と笑いながらいわれました。好調なときに引き継ぐよりも、苦しいときの方が学びは多いものです。

川の水が満ちているときは底が見えませんが、水が引くと底に落ちている空き缶や自転車などのゴミが見えてきます。不況だからこそ、普段は見えない細かな課題や改善すべき点が見え、改革のしがいがありました。

── 現場を回る中で、具体的にどのような改善を行いましたか?

山本 まずは現場ありきですので、一軒ずつホテルを回りました。そこで見えてきたのは、細部における無駄です。たとえば、無料朝食の提供終了間際にもかかわらず、サラダを山盛りに配膳しているような光景です。

また、連泊のお客様にとって毎日の清掃が本当に必要かという点も再考しました。お部屋に入られたくないという潜在的なニーズを汲み取り、清掃不要の仕組みを整えることで、無駄なコストを削減しました。こうした当たり前のことの着実な実行が、回復への近道でした。

「ESなくしてCSなし」を社長も従業員も実感

── 大阪での新型コロナ軽症者受け入れ第一号という決断も印象的でした。

山本 当時は未知のウイルスであり、現場の恐怖心も強かったはずです。しかし、この決定はトップダウンではなく、現場から「やりましょう」という声が上がったことで実現しました。

当社グループには介護施設の運営ノウハウもあり、隔離や清掃の知識があったことも後押しとなりました。ボトムアップでこうした意見が出る組織であることは、当社の強みだと思っています。

── 従業員満足(ES)が顧客満足(CS)の土台であるという信念は、どこから来ているのでしょうか?

山本 スタッフが健康で笑顔でなければ、お客様に満足や健康を提供することはできません。ESが向上すればCSも必ず上がるということは、私自身が身をもって体験しています。

何より、現場のスタッフ自身がそれを一番強く感じているはずです。スタッフが心身ともに健康で働きやすい職場環境を整えることが、結果としてお客様への最高のサービスにつながります。

── 2024年2月には、ビジネスカジュアルの導入や健康経営の本格化を発表しました。

山本 働きやすさを追求する中で、現場の意見を吸い上げた結果です。昭和の人間である私には当初ピンときませんでしたが、今の世代はカジュアルな服装の方が自分を表現でき、モチベーションも高まるとのことでした。

導入してみると、皆がそれぞれ楽しみながら働いています。こうした小さな変化の積み重ねが、組織の活性化には欠かせません。

「21世紀型」ホテルのあり方とは?

── 「CO2実質ゼロ泊」など、環境への取り組みの狙いを教えてください。

山本 差別化戦略の一つですが、21世紀型のホテルのあり方を追求した結果でもあります。20世紀型が多資源・豪華さを追求するラグジュアリーだったのに対し、これからは省資源・省エネルギーの中で「日常の感動」という情緒的価値や、健康や環境に配慮し未来価値を高めることが重要です。

宿泊して環境に良いことをしたという爽やかな気分になってもらい、自宅に帰ってもその意識を続けてもらう。そのような啓発の役割も担いたいと考えています。

── お客様からの反響はいかがでしょうか?

山本 おかげさまで、コンセプトに共感してくださったお客様より月に約9000通ものお声をいただきます。その中には「きれいな空気、きれいな水、きれいな言葉、きれいなホテル。地球も同じようになったらよいですね」というお声もありました。

この言葉は現在、当社のキャッチフレーズとして採用しています。お客様の声が当社の進むべき道を照らしてくれています。

── 出店戦略において、半導体工場の立地エリアなどへの先行出店が目立ちます。

山本 日本の経済を支えるのはインバウンドと国策企業です。半導体はまさに国策の柱であり、国の政策に沿って舵を取っています。

ホテルの稼働率は経済の先行指標です。世間がネガティブなときでも、現場の動きを見れば次に何が起こるか予測できます。国の動きを先読みしながら、戦略的に出店エリアを決めています。

従業員のモチベーションを高める仕掛け

── 会社として掲げている「自律型感動人間」を育むための独自の制度について、教えてください。

山本 当社では「夢のある人材」を採用しています。単に食べるために働いている人ではなく、将来の独立や自己実現という夢を持つ人は明るくパワーがあります。

経営理念をまとめた小冊子「フェイス」を毎日読みアウトプットすることで、思考と行動を変革してもらいます。自律型感動人間に近づくことは、自身の夢の実現への近道です。

── 「Super Dream Project」とは、どのような仕組みですか?

山本 ホテル運営にはマーケティング、接客、飲食、経理など、すべてのビジネスの根本が詰まっています。これをテーマに、将来の独立を支援するプロジェクトです。

卒業生は居酒屋やゲストハウス経営など、さまざまな分野で活躍しています。成功した卒業生との交流もあり、その姿を見た新しい世代がまた夢を持って入社するという、良いサイクルが生まれています。

── モチベーションカンパニーとして高い評価を得ている要因は何でしょうか?

山本 偏差値でいえば80を超える高いレベルを維持しています。皆が活気にあふれ、高みを目指して頑張る集団である自負があります。

一人ひとりの成長を促し、その成果が正当に評価される仕組みがあるからこそ、高いモチベーションを維持できるのだと考えます。

「地方創生」というホテルの新たな役割

── AIの活用事例があるそうですが、具体的に教えてください。

山本 社内でAIコンテストを毎年開催しています。昨年は、生成AIを活用して観光地などのイメージ画像を生成するアイデアが出されました。従来、撮影には多額の費用がかかっていましたが、これをAIで代替する試みです。

こうした新しい発想が次々と生まれる組織文化を大切にしています。

── ホテルを起点とした地方創生にも力を入れています。

山本 地方に眠る魅力的なコンテンツを、AIやDXの知見を生かして世界に発信し、人口流入を高める取り組みです。たとえば鳥取市では、ふるさと納税を通じたドローンイベントを企画しています。ホテル単体の利益ではなく、地域全体が潤う起点となることを目指します。

── 地方の魅力を引き出す「ローカリゼーション」の事例も教えてください。

山本 沖縄の店舗では、ウェルカムバーで三線の生演奏と泡盛を提供しています。また、京都の四条河原町では、舞妓さんを呼ぶイベントも定期的に行っています。

これらはすべて現場のアイデアです。「スーパーホテルに行くこと」自体を旅行の目的にしてもらえるよう、体験価値の追求を続けています。

── インバウンド戦略についてはこれからどう変化するのでしょうか?

山本 都心部が一巡した後は、魅力的な地方都市に流れが移ると読んでいます。仙台、福井、金沢、札幌、鹿児島などは、地方でありながら魅力的なコンテンツを持つ場所です。

ただし、待っているだけではお客様は来ません。当社から仕掛けを行い、地方の魅力を再発見してもらう取り組みを加速させます。

── 人口減少が進むこれからの時代、スーパーホテルはどのように選ばれ続ける存在であろうとしていますか?

山本 人を大切にし、スタッフの健康や夢を応援することは、これからの企業の必須条件です。一人ひとりの夢が何であるかを把握し、気づきを与え、同じ方向を向いて進むことが重要です。夢の実現を応援する企業体であれば、若者が減少しても必ず選ばれる存在になれます。

当社はこれからも人的資本経営をベースに、スタッフの健康管理と夢の実現を全力で応援します。

氏名
山本健策(やまもと けんさく)
社名
株式会社スーパーホテル
役職
代表取締役社長

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