建設業関連のM&Aがハイペースで推移している。今年1~9月の件数は54件(適時開示ベース)と、年内3カ月を残して前年の年間47件を上回る。これまで最多だった2021年の年間50件もすでに超え、記録を更新した。
専門工事が“ホットコーナー”に
“ホットコーナー”となっているのが電気、通信、空調などの設備工事をはじめとする専門工事の分野で、全体の約6割を占める。国内建設投資が高水準を維持する一方で、専門工事をめぐる人手不足が深刻化する中、施工能力の確保に向けたM&Aが活発化している形だ。
上場企業の適時開示情報をもとに建設業を対象とするM&Aについて、M&A Onlineが集計した。
1~9月の全54件の内訳をみると、判別が難しいケースもあるが、電気工事8件、通信工事、空調工事各5件、基礎・杭工事4件、機械・プラント設置工事3件、橋梁工事、消防施設工事各2件、塗装工事、型枠工事、大工工事、建具工事各1件など。残りは建築一式工事、土木一式工事などだった。
きんでん、同業の弘電社を850億円で買収
上場企業同士のM&Aとして目を引いたのは、電気設備工事大手のきんでんが三菱電機傘下で同業の弘電社を買収した案件。TOB(株式公開買い付け)などを通じた取得総額は約850億円に上り、9月30日付で完全子会社化した。
再開発やデータセンター、物流施設などの新設・拡張に伴う工事需要の拡大に加え、再生可能エネルギーの導入や生成AI(人工知能)の急速な普及で送配電網の更新・増強需要が見込まれる一方、優れた技術力を持つ働き手が不足するなどの課題に直面する。弘電社を傘下に取り込み、安定した受注体制の確立につなげる。
インフロニアは脱請負へ運営受託に注力
金額が最も大きいのは、準大手ゼネコン(総合建設会社)の前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスが912億円を投じて、水処理プラント設計・施工大手の水ing(東京都港区)を買収した案件。7月、荏原、日揮ホールディングス、三菱商事の3社が3分の1ずつ保有する株式のすべてを取得した。
インフロニアは脱請負戦略の一環として、コンセッション(民間による公共施設の運営受託)事業に注力中。水ingの子会社化により、上下水道施設の設計・建設、機械設備の導入から維持管理・運営までを一体的に担う体制を整える狙い。
基礎工事業者の中部基礎(愛知県一宮市)を傘下に収めたのは、コンクリート製品大手の日本ヒューム。
重点分野と位置付ける基礎事業の競争力強化が狙い。とくに大型基礎工事をめぐっては担い手不足で高度な技術や対応力を備えた工事会社が限られることから、買収でグループの施工体制を拡充する。
溶接金網大手のトーアミは型枠工事のアラキヂ(横浜市)を子会社化した。グループ傘下の建築・土木関連会社との連携による施工ネットワークを充実する。溶接金網は型枠に流し込んだコンクリートの補強材として使われる。