インターグ株式会社

公認会計士として上場企業の監査に携わっていた那須剛氏は、在籍中に始めたキックボクシングに魅了され、監査法人を退所してプロのリングに立った。異色という言葉がこれほど似合う経営者も珍しい。

引退後は現役時代から手がけていたウェブマーケティングの経験を活かし、2017年にインターグ株式会社を創業した。掲げるミッションは「一人の幸せから、世界を変える。」。まず目の前の一人を幸せにする——。その連鎖こそが世界を変えると那須氏は信じている。

同社は転職や金融、ライフスタイルなど、人生の重要な選択に寄り添う特化型のデジタルメディアを、企画から開発、運営まで一貫して手がけてきた。情報過多の時代にあって、ユーザーの最適な意思決定を支援することに徹底してこだわる。

2024年11月にはTOKYO PRO Marketへの上場を果たし、次の飛躍に向けたスタートラインに立った。会計士としての論理と、格闘家としての情熱。その両面を経営にどう注ぎ込んできたのか、那須氏に話を聞いた。

那須 剛(なす ごう)──代表取締役社長
1985年、秋田県生まれ。慶應義塾大学卒業後、有限責任 あずさ監査法人へ入所し公認会計士として上場企業等の監査に従事。在籍中に始めたキックボクシングに魅了され、同法人を退所しプロとしてデビュー。引退後、現役時代から手掛けていたウェブマーケティングの知見を活かして、2017年にインターグ株式会社を創業。現在は、生活者の最適な選択を支えるメディア事業をけん引する。
インターグ株式会社
2017年設立。「一人の幸せから、世界を変える。」をミッションに掲げるデジタルマーケティング企業。2024年11月にTOKYO PRO Market上場。転職、金融、ライフスタイルなど、多岐にわたるジャンルの特化型Webメディアの企画から開発、運営までを一貫して行う「デジタルメディア事業」を展開。ユーザーに寄り添った質の高い情報発信を通じて、生活者の最適な意思決定を支援し、関わる人すべてに前向きな変化をもたらす価値創造に取り組んでいる。2026年、B Corp認証を取得。
企業サイト:https://interg.co.jp/

目次

  1. 公認会計士からプロキックボクサーを経て起業へ至る軌跡
  2. 「一人の幸せから、世界を変える」ミッションの真意
  3. ユーザーの意思決定を支えるデジタルメディア事業の核心
  4. 感謝を可視化する「サンクスカード」と組織の在り方
  5. 地域活性化に挑む「ABE! BUS」と新規事業の展望
  6. デジタルマーケティングで社会に前向きな変化をもたらす

公認会計士からプロキックボクサーを経て起業へ至る軌跡

── 経歴がとても異色だと思います。まずはこれまでの歩みを教えてもらえますか。

那須氏(以下、敬称略) 私のキャリアは公認会計士から始まりました。大学卒業後に監査法人へ入所し、上場企業の監査業務に携わりました。数字を通じて企業の裏側を見る仕事は、ビジネスの基礎を学ぶうえできわめて有意義な時間でした。 しかし、在籍中に趣味で始めたキックボクシングに、想像以上に魅了されたんです。

── 監査法人を退所してプロキックボクサーになる決断には、勇気が必要だったのではないですか。

那須 周囲からは当然驚かれましたが、一度きりの人生で後悔をしたくないという思いが勝りました。

練習をすればするだけ結果が自分に返ってくるキックボクシングは面白く、勝敗がはっきりと出るところも自分に向いていました。自社の行動や決断の責任を自ら負うという点では、 現在の経営者という立場にも通じるところがあると思います。

── なぜデジタルマーケティングの世界で起業したのでしょうか。

那須 現役時代から、生活のためにウェブマーケティングの仕事を手がけていました。怪我でキックボクシングを引退することになり、引退後の2017年にインターグを創業しました。

── 創業当初から現在の事業形態をイメージしていましたか。

那須 もともとは受託案件も受けていましたが、受託案件よりも自社メディアに可能性を感じ、途中から自社メディアだけに注力するようになりました。

現在は、転職や金融、ライフスタイルなど、人生の重要な選択を支えるメディアを運営しています。一貫して「ユーザーが本当に必要としている情報は何か」を追求する姿勢を大切にしています。

「一人の幸せから、世界を変える」ミッションの真意

── ミッション「一人の幸せから、世界を変える。」にはどのような思いが込められているのですか。

那須 このミッションは、私の実体験に基づいています。キックボクシングをやっていたころ、自分の好きなことに熱中し取り組むことができ、とても幸せでした。現在のインターグの仕事も同じです。自分が幸せで好きなことであれば、もっと学びたい、もっと取り組みたいという気持ちが溢れ、上達し、より良いパフォーマンスにつながる。その結果、周りの人にも良い影響を与えることができる。そういった経験から、「一人の幸せから、世界を変える」というミッションを策定しました。

社員一人ひとりが働きがいや幸せを感じる環境でこそ、個々の力を最大限発揮することができ、良いパフォーマンスに繋がると考え、メンバーの働きがい向上のための制度や職場環境の整備を推進しています。

── 抽象的なスローガンではなく、具体的な行動指針として機能しているのですね。

那須 そのとおりです。メンバーの力を最大限に生かすことで、ユーザーや取引先の皆様にもより良いサービスを提供できる。その連鎖が、結果として世界をより良く変える力になると信じ、関わるすべての人に前向きな変化をもたらすことを目指しています。

── デジタルメディア事業において、そのミッションをどう体現していますか。

那須 「ユーザーが本当に必要な情報は何か」を徹底的に追求することです。インターネット上には、様々な情報が存在します。

私たちは、ユーザーの皆様が迷ったときに「このサイトを見てよかった」と思っていただけるよう、徹底したリサーチを行い、正確で質の高いコンテンツの提供に努めています。これは安定した送客もつながり、ユーザー様にも広告主様にも価値を提供することができ、それぞれの幸せに繋がると考えています。

── ユーザーの意思決定を支援するうえで、特に意識していることはありますか。

那須 ユーザーの皆様に誠実でいることです。

短期的な利益のためにユーザーを煽るような手法は取らず、本当に役立つ情報を追求しニーズに寄り添ったコンテンツを真面目に提供しています。そうした誠実な情報発信こそが、長期的な信頼関係を築く唯一の道だと信じています。

ユーザーの意思決定を支えるデジタルメディア事業の核心

── メディア事業の強みは、企画から運営までの一貫体制にあるとか。

那須 

企画、開発、デザイン、コンテンツ制作、そしてマーケティングまでを自社で一貫して手掛けています。これにより、メディア担当者が迅速にサイト改善を行うことができます。

── 多岐にわたるジャンルを扱っていますが、共通する戦略はありますか。

那須 「特化型」であることでしょうか。選択肢が多く、サービスの利用や商品購入前にいろいろと比較したいな、と思われるような商材に特化しています。

たとえば金融分野であれば、クレジットカードや証券会社、ライフスタイル分野であれば脱毛サロンやウォーターサーバーなどを取り扱っています。

── ユーザー体験(UX)の向上については、どのような取り組みをしていますか。

那須 ウェブサイト利用時のユーザーの負荷を最小限にするよう、ウェブサイトの表示速度や、情報の探しやすさを常に改善し続けています。

感謝を可視化する「サンクスカード」と組織の在り方

──ウェブサイトでは、「サンクスカード」という制度が紹介されていますね。

那須 はい、社員の立案で始まったもので、手書きのカードで感謝の気持ちを伝え合うというシンプルな仕組みです。

── 導入後の社内の反応はどうですか。

那須 部署を越えたメンバーとのコミュニケーションのきっかけにもなっているようです。また、誰かの言葉を通じて、「自分のこういうところ、ちゃんと見てもらえていたんだ」と気づけることが、自信や自己理解につながることもあると思っています。

── 組織文化を醸成するうえで、心がけていることは何ですか。

那須 行動規範として「互いに承認しあおう」「期待を越えよう」「誠実・高潔を貫こう」を掲げていて、お互いをそのまま受け入れて認め合うことや、常に人として正しい行いをすることを大切にしています。マイクロマネジメントは行わず、個々の自律した行動を尊重しています。

──多様な人材が集まっているそうですが、これは社長が異色の経歴を持つからこそでしょうか。

那須 たしかに、社員のほとんどが業界未経験で入社していて、金融、人材、消費財メーカー、広告会社など、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活躍しています。

個々の強みを活かし、協力してチームとして高いパフォーマンスを発揮できる風土や環境の整備に努めています。

地域活性化に挑む「ABE! BUS」と新規事業の展望

── 新規事業として「ABE! BUS」(アベバス)というプロジェクトを展開しているとか。

那須 私は秋田市の出身なのですが、秋田出身のつながりがある方の会社から取り組みを引き継いだのがきっかけです。その会社が行っていたバスサービスが終了になると伺い、サービスが無くなったら学生が困るだろうなと感じました。

アベバスは、国際教養大学(AIU)と秋田駅を結ぶ学生向けのシャトルバスです。秋田は日本でも少子高齢化率が高い地域といわれていて、公共の交通機関の減便なども課題になっています。

AIUは日本全国や世界から学生が集まり、学生の9割はキャンパス周辺の寮に住んでいますが、交通手段が少ないために、4年間ほとんど秋田の市街地に出ることなく卒業してしまうことも多いと聞きました。日本各地、世界中から優秀な学生が集まっているのに秋田との接点を持たないまま卒業してしまうのは、学生にとっても秋田にとってももったいないと考え、秋田と学生をつなぐ役割を担いたいという思いでアベバスの運行を開始しました。

── 事業や売り上げの観点では、そこまでプラスにならない事業ではないでしょうか?

那須 現在、運賃は無料で運行しています。今後は協賛パートナーを募集するなど他の事業アイデアも検討していますが、事業としてはまだ模索中です。ただ、バスを継続して走らせるためにも、事業としての採算はきちんと立てられるように取り組みたいと考えています。

デジタルマーケティングで社会に前向きな変化をもたらす

── 2024年11月にTOKYO PRO Marketへ上場していますが、上場の狙いは何ですか。

那須 最大の目的は、社会的信頼の獲得と組織基盤の強化です。上場企業としてのガバナンスを整えることで、より健全な経営を実現します。

また、採用力の強化や、他の企業と仕事をさせていただく際にも、スムーズに進めやすくなり、さらなる挑戦に向けた、スタートラインになったと考えています。

── 上場準備の過程で、組織にどのような変化がありましたか。

那須 業務プロセスの透明化が進み、社員の意識が一段と高まったと思います。

その過程では、監査法人時代の経験が、特に内部統制や管理体制の構築に役立ちました。規律と自由が共存する、より強固な組織へと進化したように感じています。

── 上場後の成長戦略について教えてください。

那須 既存メディアの収益性を高めるとともに、新規メディアも立ち上げていきます。蓄積されたデータとノウハウを横展開し、短期間で質の高いメディアを構築していきたいと考えています。

── 最後に、インターグがこれからどんな会社であり続けたいか、聞かせてください。

那須 これからも「一人の幸せ」を起点に歩んでいきます。短期的な利益よりも長期的な価値創造を大切にします。ユーザーや取引先の皆様に誠実に向き合い、信頼を一つずつ積み重ねる。その先にこそ、持続的な成長があると考えています。

透明性の高い経営を貫き、この哲学に共感してくれる仲間とともに、社会に前向きな変化をもたらし続けたいです。

氏名
那須 剛(なす ごう)
社名
インターグ株式会社
役職
代表取締役社長

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