JT <2914> は2月4日、9月末をめどに飲料製品の製造販売事業から撤退することを正式発表した。「桃の天然水」や「Roots」などの有名ブランドを持つ同社の飲料事業撤退は世間を驚かせた。この先飲料業界はどうなるのだろうか?市場状況を含めて検証していく。


JTの飲料事業は1998年にスタート

JTは民営化してからかなり多角的な事業の取組みを行ってきており、そのひとつが1998年にスタートした飲料事業だ。事業スタート直後にヒットした桃の天然水は業界でも大きな話題を呼んだ人気商品となった。しかし事業開始から16年を経た2014年3月期でも飲料事業の売上は500億程度であり、2兆1000億を超える同社のビジネスの中では売上構成比2.4%の小規模事業に過ぎないのが現状だ。


飲料市場規模は5兆円超

矢野経済研究所によると国内の牛乳や乳飲料を含めた飲料市場規模は5兆円を超えており、消費者の健康志向の向上からお茶やミネラルウォーター、特定保健用食品(トクホ)飲料などが好調に推移し、近年では若年層を中心にエナジー系飲料も販売量を伸ばしている。

業界は大手が高いシェアを維持しているのが特徴で、サントリー <2578> が26%弱、アサヒグループ <2502> が10.7%、伊藤園 <2593> が10.2%、コカ・コーラがイースト <2580> 、ウエスト < 2579> 合計で19%といった状況で上位企業による寡占化が進みつつある。こうした中にあってJTの飲料ビジネスは大きなものとはいえず、人口減少によるマーケットの縮減が予想される国内飲料市場では大きな伸びが期待できないという判断から今回のような決断が下されたものと思われる。