バブル崩壊後、メガバンクを中心に日本の銀行業界は大きな再編の波に飲み込まれた。そして今、金利低下と地域間格差が引き金となり、地域金融機関に生き残りをかけた再編の波が各行を襲っている。


緩和マネーはどこへ行った

日本銀行によると、地方銀行(第二地銀を含む)の2015年1月の融資残高は218兆円と前年同月比3.8%増加し、伸び率はリーマン・ショック後に政府が企業の資金繰りを支援した2009年5月以来の高水準となった。一方、地方銀行にはまだまだ資金の余剰感があるという実情も浮き彫りになっている。地方銀行の預金量は2013年4月から15兆円増えている。そのため地方銀行間で融資先の獲得競争が激しさを増しており、採算はむしろ悪化し、2014年4~9月期の貸出金の利息収入(第二地銀を含む)は前年同期に比べ3.1%減少しているのだ。

貸出金については、大手企業を中心としたアベノミクス効果が徐々に浸透するなか、設備投資の回復、住宅ローンの需要増などで増加している。しかし、貸出金利の低迷が続いたことで、収益性が低下する結果になった。低金利が続くなか、融資先の開拓、金利交渉など、資金運用が思い通りに進まず収益が圧迫されているのだ。


森ペーパーの衝撃

2013年9月、金融庁はこれまでとは異なった検査・監督方針により地域金融機関のビジネスモデルの持続性を検証することを明らかにするとともに、将来の地域金融機関の収益分析表を示した。金融庁の森信親検査局長の肝いりで作られたことから「森ペーパー」と呼ばれ、そこには具体名こそ記されていないものの、再編の対象となる銀行が示されていたのだ。この表をめぐり、再建対象についての憶測が飛び交うこととなる。

金融庁は「オーバーバンキングで過当競争になっている」と見て地域金融機関の再編を促している。さらに、麻生太郎財務・金融相も地域金融機関の再編に前向きな姿勢を示し、業界再編に含みを持たせている。政府は地域金融機関の再編のお膳立てを進めているかのようにうかがえる。