『長期平準定期保険』と『逓増定期保険』という保険商品の名前を聞いたことはあるだろうか。

これら保険は、一般個人が加入する個人向けの保険とは異なり、法人向けの保険である。法人が生命保険に加入する目的は、①経営者に万が一のことがあった場合の備え、②経営者の退職金の準備、③税金対策、④緊急時の資金の確保、などが挙げられる。

今回紹介するこの2つの保険は、これら需要を満たすための保険である。

長期平準定期保険とは

長期平準定期保険とは、保障の責任開始日から保険期間満了日までの一定期間を保障する保険で、いわゆる『定期保険』と呼ばれるものだ。

『平準』とは保険金額が変わらないという意味で、特に長期の保険期間を設定しているため「長期平準定期保険」と言われている。保険期間は保険会社によっても異なるが、満期を100歳に設定するものもあり、安い保険料で終身保険と同様の機能を持たせることができる。

その一方で、解約返戻金の戻り率が高いので、途中解約を前提に退職金の準備資金として活用されることも多い。

逓増定期保険とは

一方、逓増定期保険とは、基本的に定期保険であることに変わりはないが、死亡保険金が保険期間の経過により増加するタイプの保険だ。定期保険なので、掛け捨ての保険であることは長期平準定期保険と変わりはないが、長期平準定期保険に比べ保険期間を短く設定し70歳程度を満期とする契約が多くなっている。

逓増定期保険の大きな特徴は、加入後の早い時期に解約返戻金の返戻率が高くなるところだ。短期間で解約しても高率の解約返戻金が発生するため、役員退職金の準備や節税対策として利用される場合が多い。

長期平準定期保険のメリット

長期平準定期保険のメリットとしては、契約者年齢によっては解約返戻率が100%を超えるものもあるなど、逓増定期保険とは異なり解約返礼金の高い戻り率が長期間続く(10年から15年以降)ため、解約するタイミングを自由に選べるということが挙げられる。

長期平準定期保険のデメリット

死亡保障の保険金額が一定のため、保障を重視した場合には逓増定期保険に比べ劣る。

逓増定期保険のメリット

逓増定期保険のメリットとしては、長期平準定期保険に比べ保険料を高額に設定することができるため節税効果が高いこと、また、解約返戻金の戻り率が高まる時期が早い(5年程度)ため短期に資金を回収できること、保障に重点を置く場合は死亡リスクが高まる高齢の時期に保障額が大きくなることが挙げられる。

逓増定期保険のデメリット

解約返戻金の戻り率が高い時期を経過してしまうと、徐々に解約返戻金が少なくなってしまうので、解約時期の判断が難しい。

税制上の取扱い

長期平準定期保険と逓増定期保険では、いずれも保険期間の当初6割の期間については、保険料の2分の1を『支払保険料』として損金に算入することができる(逓増定期保険については、満期年齢により、3分の2ないし4分の3を資産計上しなければならないものもある)。

残り2分の1の保険料は資産計上になる。期間の残りの4割については、支払保険料の全額を損金算入し、すでに資産計上した分を均等に取り崩して損金とすることができる。

保険の活用場面

支払保険料の半分が損金になるといっても赤字の会社であれば意味がないので、黒字であることが前提となる。その上で、一定の決まった時期に退職金や設備資金が必要な場合には、保険の活用を検討するとよい。保険料の半分が経費となるため、多額の費用計上をしつつ資金を準備できるからである。

そして、その時期が短期ならば逓増定期保険、長期ならば長期平準定期保険ということになる。また、一定の決まった時期に資金が必要なくても、緊急時に備えて保険を利用したり、事業承継の際の納税資金として保険を活用したりという手もあるだろう。

保険を活用する上での注意点

節税になるとはいえ単なる課税の繰り延べなので、将来、保険を解約して解約返戻金を受け取るとその分は収入になってしまう。したがって、解約時に黒字の場合には法人税が課税されることになるので注意が必要だ。

また、保険料の一部が経費にはなるが、現金が減るのでキャッシュフローが悪化することは否めない。よって、保険の設計においては、余裕をもって保険料等を設定することが重要である。

以上のとおり、保険による節税は、全ての企業が活用できるということではない。自社の財務状況を把握した上で、それぞれの保険のメリットとデメリットを比較しながら、うまく活用してほしい。(ZUU online 編集部)