今後注目の業種別タイ大手企業

タイ証券取引所には500社近い会社が上場しており、最近であればタイの大手財閥グループであるCPグループと伊藤忠商事 <8001> が資本提携を行ったように、タイと日本の大手企業同士が資本提携という形がさらに増えていくことが予想される。

タイ証券取引所では、その企業の業種で大きく8つのカテゴリーに分類されており、農業/食品、消費財、金融、工業、不動産、エネルギー、サービス、IT・通信となっている。

昨今、度々名前が出るようになった、CPグループの旗艦企業であるCPフーズ(CPF)は、タイの農業/食品セクターで上場をしている。2013年度の通年の業績は、売上が4045億バーツ(約1.5兆円規模)、純利益で70億バーツ(260億円規模)という巨大企業である。この他にも、ツナ缶世界最大手であるタイ・ユニオン・フローズングループ(TUF)は、積極的なM&Aを繰り返し世界の水産加工業の大手企業に名乗りを上げている。(為替レートは2014年1月末 1バーツ=3.65円で計算)

消費材ではサハパタナビブン・グループ(SPC)が、日系の企業と多く合弁事業を展開している。2014年10月には、東京急行電鉄 <9005> と合弁でシラチャ地区における不動産開発に乗り出すことを発表した。

金融分野においていは、日本に支店もあるバンコク銀行(BBL)がタイの最大金融機関グループであり、多くの地銀や信金も出向者を派遣している。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> が買収したアユタヤ銀行(BAY)も、同様にタイ証券取引所に上場している金融機関である。

工業では、自動車産業を支える自動車部品メーカーが数多く存在し、上場企業としてアーピコハイテック(AH)、ソンブーンアドバンスドテクノロジー(SAT)は、日系各自動車メーカーに部品を納める大手企業である。

不動産業界では、ゼネコン大手がインフラ開発に合わせ、多くのプロジェクトでの受注を取り、イタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)やチョーガンチャーン(CK)などが、高架鉄道、地下鉄、道などを次々と建設している。住宅不動産においては、日系企業と合弁を組むAPタイランド(AP)やアナンダ・プロパティ(ANAD)も、タイ証券取引所に上場している住宅開発企業である。

エネルギー分野は国営の企業が多く、タイ国営石油(PTT)がタイの最大であり、売上規模は2013年度末で2兆8839億バーツ(およそ10兆円規模)にもおよぶ巨大エネルギー企業である。

今後もっとも伸びる産業であると期待されているサービス産業では、セブンーイレブンブランドを展開するコンビニエンスストアCPオール(CPALL)や、フランスカジノグループの運営するビッグ・C・スーパーセンター(BIGC)などが大手企業で、タイ国内中間層をターゲットとして店舗数を増加させている。近年話題のLCCのタイ・エアアジア(AAV)やノックエア(NOK)も同カテゴリーで上場している。

IT/通信分野は、携帯電話キャリア1位のAIS(ADVANC)やノルウェー系2位のトータルアクセス(DTAC)、通信大手トゥルー(TRUE)などは、すでにタイ国内での認知度は高い。過去の日本の通信関連企業のように、様々なインターネット系サービス企業の他に、電子部品や通信インフラで活躍するタイの企業も増えている。

今後、ますますASEANの情報や、進出案件数が増加するに従い、日本でも認知度が広がり有名になるタイ企業も増えていくだろう。 (ZUU online 編集部)

阿部俊之(あべ・としゆき)
ASEAN ジャパン コンサルティング株式会社代表取締役。タイ・アセアン市場調査のためのマーケティング情報サイト 『Asean Japan』 を運営。ASEAN諸国(シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)の上場企業概要レポートを作成・配布している。