imasia_13304582_S
(写真=PIXTA)

◆昨日は、中国当局の様々な株価対策にも拘らず下げ止まらない中国株価を眺め、中国の実体経済への悪影響への懸念が高まり、各種コモディティ価格の下落や既存ポジション整理の動きが広がり、為替市場ではドル/円の下落、強気派が増えつつあったポンドの下落、下落基調だったNZドルの上昇、そしてブラジルレアルなどの新興国通貨安が目立った。ドル/円は122円台半ばから一時120.41円へ2円以上下落した。

◆他方、ユーロはあまり影響を受けず、むしろ対ドルや対フランで上昇している。

◆本日は、中国株式市場が沈静化するか、および本日提出予定となっているギリシャの新たな財政改革案を受けてギリシャのユーロ圏離脱が回避できる方向に向かうのか、が注目される。

中国当局による様々な対策にもかかわらず中国の投資家心理が改善せず、中国株価が下落を続けるようだと、金融市場のリスク回避的な動きが継続し、米利回り低下とドル/円の下落、鉄鉱石、銅、原油などコモディティ価格の下落とコモディティ通貨(豪ドル、カナダドル)の下落、およびブラジルレアルや南アランドなど新興国通貨の売り圧力が継続しそうだ。

◆その他、豪州では6月雇用統計が発表されるが、中ではRBA政策金利と連動性の高い失業率が注目で、予想以上に上昇するようだと、足許の豪ドル安基調が強まることになりそうだ。他方、市場予想を下回る良好な結果となっても、豪ドル安基調や鉄鉱石価格の大幅下落の中で、豪ドルは上昇余地が限定的となりそうだ。


昨日までの世界:いChinaん去ってまたいChinaん?

ドル/円は、中国当局の様々な株価対策にも拘らず下げ止まらない中国株価を眺め、中国の実体経済への悪影響への懸念が高まり、原油、鉄鉱石、銅など各種コモディティ価格の下落や既存ポジション整理の動きが広がる中で、122円台半ばから一時120.41円へ2円以上の大幅下落となった。

また、6月FOMC議事要旨でギリシャ情勢や中国景気に関する不透明感についての指摘があったことなどから、全体としてハト派的な内容と受け止められ、発表後に米利回りの低下とドル続落に繋がった。

ユーロ/ドルは、中国株安の影響は殆ど受けず、むしろ1.10ドル丁度近辺から1.11ドル丁度手前までじり高となった。欧州時間にはユーロ/フランが1.04フランから1.052フランへ急上昇する場面があり、スイス中銀のフラン売り介入の可能性が指摘されているが、こうした動きも下支えとなった可能性がある。

この間、Tsiprasギリシャ首相は3年間の新たな金融支援を要請、本日9日に新たな改革案を提出する意向を表明したが、EU側の評価がまだ聞かれていない中で、市場が好感したかは不明だ。

ユーロ/円はドル/円の下落の影響が大きく、134円台後半から133.31円へ下落した。

豪ドル/米ドルは、中国の株安が実体経済に悪影響を及ぼすのではとの懸念が広がる中、豪州の主要輸出品である鉄鉱石価格も10%程度下落したことから、欧州時間にかけて0.74ドル台半ばから0.7372ドルへ続落し、年初来安値の更新が続いた。

もっとも、欧米時間には、NZドルショートの手仕舞いと見られるNZドル反発や米ドルの下落傾向を受けて、0.74ドル台半ばへ反発した。

豪ドル/円は米ドル/円の下落の影響が大きく、91円台前半から89.46円へ急落し2月の年初来安値である89.37円に迫っている。


きょうの高慢な偏見:ブラックならぬレッドスワン?

ドル/円は、他の通貨ペアと同様に、中国株式市場が沈静化するか、および本日提出予定となっているギリシャの新たな財政改革案を受けてギリシャのユーロ圏離脱が回避できる方向に向かうのか、が注目される。

中国当局による様々な対策にもかかわらず中国の投資家心理が改善せず、中国株価が下落を続けるようだと、中国の実体経済への悪影響に対する懸念が更に強まり、金融市場のリスク回避的な動きを助長し、米中長期債利回り低下とドル/円の続落に繋がりそうだ。

米日2年債利回り格差の大幅縮小は更なるドル安円高を示唆しているが、目先は120円丁度を割り込まないかが焦点となる。

中国当局の対策としては、中国証券金融や政府系ファンドを通じた更なるPKO(買い支え)、利下げや預金準備率引き下げといった追加金融緩和が行われるか、行われた場合にどの程度効果があるのかが注目される。

輸出押上げのための人民元切り下げが行われる場合にはかなりのサプライズとなり、世界的な通貨切り下げ競争に繋がるリスクがあり非常に危険だ(但し中国の人民元国際化・SDR算出通貨への組み入れといった政府目標と反するため、可能性は非常に低いとみられる)。

本邦サイドからは、「急激な変動は望ましくない」といった政府からの口先介入が一時的に円高阻止材料となる可能性はあるが、より強力な効果を持つには、そもそも6月高値以降のドル/円相場の反落基調開始の一因となった黒田総裁発言の明確な修正が必要だ。

ユーロ/ドルは、本日提出される予定のギリシャの新改革案とEU側の評価が注目されるが、中国株価急落やギリシャ支援問題を巡る緊張の影響を殆ど受けておらず、足許は取引しにくい通貨となっている。むしろ、こうしたリスク回避的環境でも底堅い動きを示し続けるようだと、奇妙なことだがユーロが安全通貨として需要が高まる可能性もある。

豪ドル/米ドルは、本日発表の豪6月雇用統計で特にRBA政策金利と連動性の高い失業率が注目だ。予想以上に上昇するようだと、足許の豪ドル安基調が強まることになりそうだ。

他方、市場予想を下回る良好な結果となっても、豪ドル安基調や鉄鉱石価格の大幅下落の中で、豪ドルは上昇余地が限定的となりそうだ。

dayly7-9

山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

【関連リンク】
本日の急落について
雇用統計の結果~9月利上げなのか~
ギリシャの運命と金融市場への影響は?
ギリシャの国民投票結果受けて調整必至も押し目買いの好機
上海株は好材料が揃って反発でのスタートか香港株はギリシャの「No」で続落か