自動車大手のトヨタ自動車 <7203> が2015年3月期の連結決算を5月8日に発表しました。連結売上高は 27兆 2,345億円(前期比6.0%増)、連結営業利益は2兆 7,505億円(前期比20.0%増)と業績は非常に好調です。

トヨタグループ全体での販売台数はコンスタントに1,000万台を超える状況になってきています。

今期は1,016万台と昨年よりも3万5,000台の増となっています。国内の販売台数の減少を、好調な北米の販売がカバーした形です。

販売が好調なことに加えて、トヨタ自動車が得意とする「カイゼン」(※注釈)によるコスト削減の影響も大きく、今期は原価改善により2,800億円の収益上乗せ効果がありました。さらに米ドルによる為替差益も2,800億円計上しており、過去最高の連結営業利益となっています。
(※注釈)「カイゼンとは」

日本の製造業で生まれた工場の作業者が中心となって行う活動や戦略のこと。海外でも通用する言葉で、本来の意味と区別するために「カイゼン」「Kaizen」と表記される。


世界の自動車大手企業のなかでも光る高い収益力

トヨタ自動車のライバル企業は国内同業他社というよりも、グローバルに目を向けた方が分かりやすいでしょう。

販売台数で比べると、独フォルクスワーゲンの1,014万台、米ゼネラル・モーターズの992万台がトヨタ自動車と同規模を誇り、この3社で激しい競争を繰り広げています。次に韓国の現代自動車の771万台が続きます。

売上に直結する販売台数以外にも、「稼ぐ力」を表す収益力で測ってみるとまた違う側面が見えてきます。連結営業利益率で比べると、フォルクスワーゲン4.4%、ゼネラル・モーターズ1.7%と、ともに5%にも達していません。

一方、トヨタ自動車はフォルクスワーゲンの倍以上の10.1%という高い営業利益率を達成しています。これは、トヨタ自動車の「カイゼン」による絶え間ないコスト削減努力を反映していると言えるでしょう。

ではトヨタ自動車はどこで稼いでいるのでしょうか。

依然として国内で多く販売しているのでしょうか。

実は今期最も販売台数が多かったのは北米で271万台、一方、日本国内では215万台と、トヨタ自動車の主戦場は北米にあるといっても過言ではない状況です。

成長著しい中国やアジアの新興国では、販売台数が160万台から148万台へと12万台も減少しています。

特に各社の競争が激しい中国ではシェアは4%にとどまっており、フォルクスワーゲンやゼネラル・モーターズのシェア15%~16%と比べると劣勢です。市場規模の成長に合わせた車種の投入がうまくいっているとは言い難いところです。

今後これまで以上に中国や新興国での販売強化が必要になってきますが、まだ有効な打ち手は見いだせていません。


トヨタ自動車のプラットフォーム戦略

トヨタ自動車は今年1月、燃料電池車(FCV)に関連する特許5,680件を無償で公開すると発表しました。

ホンダ <7267> とゼネラル・モーターズも燃料電池車に関する特許を公開しましたが、あくまでも両社間で公開するのみで他社には公開していません。

特許を無償で公開することで、水素を燃料とする「究極のエコカー」作りにおいてトヨタ自動車が持つ技術を世界のスタンダードにしてしまおうという計画です。

トヨタ自動車の特許を使って燃料電池車を他社にも開発してもらうことで、技術は普及しコストも下がります。

さらに特許を公開するとは言っても、自社で研究開発を進めてきた実績があるため、他社が追随するにはどうしても時間がかかります。

したがって、トヨタ自動車の特許をベースに開発が広がれば広がるほど、トヨタ自動車の優位性は確たるものとなるのです。

16年3月期も増益見通しのトヨタ自動車、今後のさらなる活躍に注目です。 (提供: ファイナンシャルスタンダード株式会社

【関連記事】
再燃する米財政問題、隠れた爆弾の「米利上げ」
「分散投資」の考え方は資産運用でどれくらい重要なのか?
相続税増税時代、生命保険を活用した相続対策を知っていますか?
もしもの時のために…終活“エンディングノート”のススメ
移住したい国として人気のシンガポール。その理由は?