税額
(写真=PIXTA)

今年1月から相続税法が改正され、遺産にかかる基礎控除が引き下げられると共に、税率の改定がなされた。それに伴い、従来であれば相続税がかからなかった世帯でも相続税が発生する可能性が高くなっている。それでも、「相続なんかその時になってから考えればいい」と思っている人も多くいる。しかし、相続税は原則として現金で支払わなければならないので、金融資産がない場合には不動産等を手放さなければならなくなる。こうならないためにも、しっかりとした相続対策が必要になる。

相続税の計算方法は、相続財産評価額から遺産にかかる基礎控除額を差し引き、それを法定相続分で分配した額を算定する。それに税率を掛けて相続税額を計算する。これまで遺産にかかる基礎控除は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」だったが、今年1月からは、「3,000万円+600万円×法定相続人」になった。

たとえば、相続人が妻と子供3人の場合、これまでであれば、5,000万円+1,000万円×4人=9,000万円だったものが、今年1月からは、3000万円+600万円×4人=5,200万円になる。つまり、これまでであれば9,000万円までは相続税がかからなかったが、今年1月からは5,200万円を超えた分からは相続税が発生する可能性がある 。

特に都市部に不動産を所有している場合には、5,200万円を超えるものはたくさんあるので、これまで人ごとだった相続税が一気に現実味を帯びてきたのだ。ただ、配偶者の場合、夫と生活を共にし、財産を共に築いてきたこともあるので、政策的に税額軽減の特例が認められている。税額軽減の特例とは、1億6千万円か配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い額までは相続税がかからないというものだ。

この配偶者の税額軽減の特例があるため、配偶者は余程のことがない限り、相続税はかからない。そのため、特に相続対策は必要ないのではないかと思われる人もいる。しかし、相続は1回で終わるものではない。

夫が亡くなった後、配偶者の税額軽減の特例があるからといって、配偶者がすべて相続すると、そこでの相続税額は軽減されるか、あるいは無くなるが、配偶者が高齢の場合には、近い将来「2次相続」が必ず発生するので、場合によっては、子供に大きな相続税負担を強いることになってしまうことがある。

配偶者が若い場合には、生活していかなければならないので、遺産を受け取り、それを活用しながら、子供への遺産を考えるということは有効なことであるが、目先の税負担の軽減のみを考えるのではなく、2次相続も含めて、どのように相続するのがよいのか、しっかりと見極めることが大事である。

法定相続分を超えて配偶者に多額の遺産を配分する場合、その多額の資産がそのまま子供に引き継がれることになるので、税額軽減措置のない子供達は多額の相続税を支払うか不動産等の遺産であれば、それを手放さなければならなくなる。親がいる場合、子供達は、親に遠慮して相続は全て親にするケースがこれまでは多かったと思われるが、これからは、相続税が発生する確率が高まったので、心情的なことで判断するのではなく、どうすれば有利なのかよく考えてほしい。

遺産分割は相続人同士で決めることができるが、遺言がある場合には、遺留分を除けば被相続人の意思に委ねられるので、多額の資産がある場合には、生前の内に親と子がしっかりと話し合っておくことが重要である。また、特に兄弟姉妹がいる場合には、「相続」が「争続」に発展することが多いので、金融資産の割合を増やしておくなど、事前の対策が重要である。(提供: Vortex online

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