小規模宅地
(写真=PIXTA)

平成27年1月から、相続税の基礎控除が引き上げられました。その結果、多額の相続税のために土地や家を売ってしまうという人が増えるかもしれません。しかし実は「小規模宅地の特例」を利用すれば、相続税を節税できることがあります。今回はあまり理解されていない、小規模宅地の特例とはどのような制度なのか、適用されるとどのようなメリットがあるのかをご紹介します。


小規模宅地の特例が受けられる条件


・小規模宅地の特例で相続税が減額

平成27年度以降の相続から、相続税の基礎控除が引き上げられました。この改正で基礎控除が4割減るため、これまで相続税の心配をする必要のなかった人も、相続税を納付しなければならなくなる可能性があります。しかし多くの資産を持つわけではない一般人がまともに課税されたのでは、これまで住んでいた住居を手放さなければならなくなったり、家業を営むことができなったりしてしまいます。過去に購入した自宅と預貯金しか財産がない会社員の方が、多くの相続税を支払うのは至難です。このような事態を避けることができるのが「小規模宅地の特例」です。この制度の適用を受けることができれば、土地の評価額を最大80%減額することができます。

小規模宅地の特例を受けるには、いくつかの要件があります。それらに該当していなければ適用されません。特例の対象となるのは「相続・遺贈によって取得した財産」のうち「相続開始の直前に被相続人の事業もしくは居住に使用されていたもの」です。そして適用されるのは「相続人・被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族」に限られます。


・3つの対象となる土地

小規模宅地の特例の対象となる土地は、「被相続人等の居住用宅地」「被相続人等の事業用宅地」「被相続人の貸付事業用宅地」のいずれかです。「特定同族会社事業用宅地」などの区分もありますが、主に該当するのは上記の3つが多いですので、これらのそれぞれについて、誰が特例を受けることができるのか解説します。

①特定居住用宅地

特定居住用宅地とは、相続開始の直前に被相続人やその親族が居住していた宅地のことです。特例居住用宅地の特例を受けることができるのは「被相続人の配偶者」「被相続人と同居していた親族」「被相続人と同居していないが要件を満たす親族」の3つのいずれかに該当する方です。

「被相続人の配偶者」の場合は、相続開始の直前においてその土地に居住していれば、特例が適用されます。「被相続人と同居していた親族」は、相続開始時〜相続税の申告期限までその宅地に居住していて、なおかつ申告期限までその宅地を保有している人に適用されます。

そして「被相続人と同居していない親族」は少し複雑です。まず「被相続人に配偶者がいない」こと、そして「被相続人と同居している親族の中に『被相続人の相続人』となる人がいない」こと、さらに「相続開始前3年以内に自分とその配偶者の保有する宅地に居住していないこと」、かつ「相続される宅地を相続税の申告期限まで保有していること」の全ての条件に当てはまらなければなりません。

基本的には被相続人と同居している配偶者と、その子どもが継続してその宅地に住む場合は、特例を受けることができるということです。

②特定事業用宅地

特定事業用宅地とは、相続開始の直前に被相続人やその家族が事業のために使用していた宅地のことです。この特定事業用宅地で特例を受けることができる宅地は「被相続人の事業に使われていた宅地」もしくは「被相続人と生計を一にしていた親族の事業に使われていた宅地」のいずれかです。さらにそれぞれに要件があります。

「被相続人の事業に使われていた宅地」の場合は

・被相続人から相続もしくは遺贈されたもの
・その事業を相続税の申告期限まで営んでいる

という2つの要件をクリアしている場合に限り、特例が適用されます。

「 被相続人と生計を一にしていた親族の事業に使われていた宅地」の場合は

・被相続人から相続もしくは遺贈されたもの
・相続開始直前〜相続税の申告期限まで事業を営んでいる

という2つの要件をクリアしている必要があります。

③貸付事業用宅地

貸付事業用宅地とは、被相続人の貸付事業(不動産貸付、駐車場など)に使われていた宅地のことです。貸付事業用宅地は適用される特例の内容は異なりますが、適用の要件は特定事業用宅地と同じです。


小規模宅地の特例ではどれだけ減額されるのか

上記の要件に当てはまり特例が適用された場合、どれだけの相続税を減額することができるのでしょうか。「特定居住用宅地」の場合、相続した面積が「330㎡以下」の場合、相続税評価額が「80%」減額されます。「特定事業用宅地」の場合は、相続した面積が「400㎡以下」の場合、これも相続税評価額が「80%」減額されます。そしてアパートや駐車場などの「貸付事業用宅地」の場合は「200㎡以下」の場合で相続税評価額が「50%」減額されます。以前は居住用宅地については「240㎡以下」だったのですが、平成27年度以降の相続からは、面積が拡大されています。つまり面積330㎡以下で評価額が1億円の土地ならば、評価額が2000万円になるのです。

具体例で見てみましょう。相続税の基礎控除の計算は「3000万円+(600万円×法定相続人)=基礎控除額」という式で算出されます。例えば配偶者が1人、子どもが1人の場合、基礎控除額は「3000万円+(600万円×2人)=4200万円となります。課税価格が4200万円以下ならば基礎控除以内に納まるため、相続税が0円になることになります。仮に相続する宅地が以下のようなものであったとします。

・面積:300㎡
・相続税評価額:1億3000万円
・用途:居住用

このケースでは配偶者1人、子ども1人ですので、特例を適用しなかった場合の相続税は「1億3000万―4200万円)×40%ー1700万円=1820万円になります。1820万円もの相続税を支払うのは、とても大変です。しかしこの宅地に特例が適用された場合、1億3000万円の評価額は80%減額されて「2600万円」になります。2600万円ならば基礎控除の4200万円以下になりますので、相続税は0円になるのです。

小規模宅地の特例には、このようにとても大きなメリットがあります。しかし適用要件や制度の仕組み自体が難しいことから利用が進んでいません。そして注意しなければならないのが、特例を受けるためには自分で申告する必要があるということです。例え全ての要件を満たしていて相続税が0円になったとしても、それを申告しなければ適用されません。

特例が適用されるには、相続税の申告書に特例を受けることを記載し、どのように適用されるのかを計算した書類などを提出する必要があります。また特例を受けるにあたって、相続人全ての同意が必要です。小規模宅地の特例は複雑な制度ですので、もしも自分は適用されるのでは、と心当たりのある方は身近な税理士などに相談してみるといいでしょう。(提供: Leeways online )

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