(写真=PIXTA)
不動産投資信託(REIT)の価格が回復に転じている。代表的指標である東証REIT指数は9月10日に一時1500ポイントを割り込んで昨年5月以来の安値をつけたあと、直近では約1700ポイントまで13%上昇した。今後も堅調に推移すると見込まれ、そのポイントは高利回り、良好なファンダメンタルズ、そして需給改善見通しの3つだ。
1.REITの分配金利回りが向上
安値から1割以上値上がりしたとはいえ、年初来でみるとまだ10%の下落で、例えばTOPIX(東証株価指数)が7%台半ばのプラスであるのと比べ大きくアンダーパフォームしている。これはギリシャ債務問題や中国経済減速懸念などによる世界同時株安の影響や、公募増資が続いたことによる需給悪化でREIT市場が7-9月に2回の大きな急落局面を経たためだ。また、株価は年初からの円安基調で企業全般の業績改善を織り込んだが、REITにはその恩恵がほとんど及ばないことも要因のひとつではある。
ただ、REIT価格の下落により分配金利回りが上昇し、長期金利との利回り格差(スプレッド)が直近で3.3%程度と、今年6月までの1年半の平均3%を上回っている。この高利回りを求め、今後はとくに国内個人や海外の投資家の買いが期待できそうだ。さらに、国内では日銀の追加緩和への期待など、金利低下圧力が強まっている。
このため利回りを重視する国内の個人や機関投資家にとってREITの魅力が増している。実際、国内ではJ-REIT特化型投資信託への純資金流入額が今年1-8月で約5800億円に達するなどインカムゲインに対するニーズは強い。
2.海外REIT市場と比較すると割安感が目立つ
また、海外ではREIT利回りが米国で2%弱、オーストラリアは2.5%程度と日本のそれを大きく下回っており、日本市場の割安感は米国の利上げが予想されるなかで今後さらに強まる見通しだ。シンガポールは4%強と高いが、市場規模が6兆円強と日本の10兆円超より小さいため、投資規模の大きい機関投資家の資金の一部が日本に向かう可能性が高いとみる。