REIT市場で期待できる分野はどこ?

REITの資産増加要因にはファンダメンタルズの向上、すなわち資産そのものの価値の上昇に伴う内部成長と、新たな資産購入でもたらされる外部成長があるが、オフィス型やホテル型のREITではファンダメンタルズ向上によるキャピタルゲインも期待できる。

オフィス型の指標では、例えば三鬼商事が公表する東京都心 5 区の平均募集賃料が2014 年1 月以降 21 カ月連続で前月比プラスとなり 2015 年 9 月末は 2013 年末より8.6%上昇、空室率も低下している。またホテル型は、いわずもがな訪日外国人の増加により稼働率上昇が続いて満室となるホテルが続出し、宿泊料が高騰している。

REITは保有資産が変わらなくてもそれが生む利益が増えて利回りが上昇すれば、他銘柄との比較感から価格上昇が期待できる。他方、マンションを中心とする住宅型REITは賃料の引き上げが難しく、建設費も高騰していることから、ファンダメンタルズの改善はあまり期待できない。9月の首都圏マンション販売件数は4カ月ぶりに減少し、3割近い落ち込みとなったが、最近発覚した施工データの偽装問題はこの販売不振に拍車をかけるだけでなく、REIT組み入れ物件の価格にもマイナスに働きそうだ。

3.REIT市場の投資案件基準が少なくなっている

REIT市場のもうひとつのプラス要因は市場の需給改善見通しである。7-9月は新規資金調達が続き、投資家がその捻出のために保有銘柄を売却したことが市況悪化に拍車をかけた。しかし、人手不足や資材高騰による不動産価格の上昇によりREITの投資基準のハードル(キャップレート)が上がり、これをクリアする新規投資案件が少なくなっている。REITの増資が少なくなればその分、資金が既存銘柄に向かい、株価(投資口価格)が上昇しやすくなるという理屈だ。

日銀が追加緩和に踏み切ってREITの購入を増やせばもちろん需給にプラスだが、今年の年間買い付け予算は900億円。これが多少増えたくらいでは、REITの時価総額10兆円超、ひと月の売買総額1兆8000億円強(今年9月)からみれば市場へのインパクトは限られている。むしろ重要なのは低金利政策が続くことでREITの利回りの魅力が相対的に増すということだ。

適切なREIT銘柄を選んで分散投資を

これまで見てきたように、国内のREIT市場は世界的に見ても割安で魅力がある。投資家のリスク選好度合いによって東証REIT指数連動型ファンドに投資するか、また個別銘柄を選別するか決めることになるだろう。ただ、実績の比較的浅いREITのなかには資産拡大を優先し、利回りの低い物件でも組み入れてしまう懸念がある。また、ファンダメンタルズ面では住宅型よりオフィスやホテル型の方が明らかに強いとみられる。このため適切な銘柄を選んで分散投資する方がリターンが大きそうだ。さらに毎月分配型投資信託であれば、元本を削って高額な分配金を支払っているものは避けた方がよい。

7月以降、2回の急落要因となった外部リスクには引き続き注意が必要だ。今月19日に発表された中国の7-9月GDP成長率は政府年間目標の7%を下回ったが市場予想をわずかに上回る6.9%という「出来過ぎ」の結果だった。同国の電力消費量や輸入など需要側の統計から見てこの数字に疑念を抱くエコノミストは多い。

2度あることは3度ある。欧州債務問題の再燃を含め、投資センチメントが再びリスクオフに傾く可能性を念頭に置き、下がったら押し目買いを入れられるような余裕ある投資スタンスが望ましい。 (ZUU online 編集部)