米国マーケット
(写真=PIXTA)

11月13日、フランスで許されざる同時多発テロが起きた。亡くなられた方の冥福をお祈りするとともに、怪我をされた方のご回復、一刻も早い治安の回復を願う。

テロ発生後に最初の取引開始となった日本市場では、朝方に日経平均が350円近く下落する場面があったが、その後は徐々に値を戻し、14時現在は下げ幅を200円未満まで縮めている。本レポートでは、過去に欧米で起きたテロ事件後の米国株式市場とドル円の値動きをまとめた。

詳細は後述するが、概して言える傾向は「テロを理由に株価が値下がりしドル円が円高に振れても、まもなくどちらもテロ発生前の水準を回復した。またはテロに対し株価や為替の反応は見られなかった」というものであった。


2001年9月11日 米国同時多発テロ

2001年9月11日に起きた米国の同時多発テロ。筆者は当時高校生だったが、ニュース番組で飛行機がビルに突っ込むシーンが何度も繰り返されるのを見て、言葉を失ったことを鮮明に覚えている。世界中に大きな衝撃が走り、9月11日から14日までの4日間に渡って米国株式市場は休場となった。

当時のダウ平均株価とドル円の値動きをみると、取引再開後株価は大きく値下がりし、一時テロ発生前と比べて15%近く下落した。また、リスク回避の円高が進んだ(グラフ参照)

g20151116_1 (1)

ただ、株価は取引再開後5営業日目に底を打ち、その後は回復基調となった。そして事件から約2ヶ月後の11月9日にはテロ発生前の株価を回復、年末にかけてさらに上昇した。株価は短期間でテロ事件の影響を克服したのである。


2004年3月11日 スペイン列車爆破事件

2004年3月11日にスペインの首都マドリードの3つの駅で列車が爆発した。200人近い方が亡くなり、多数の負傷者を出した。事件後にイスラム過激派が犯行声明を出し、米国だけでなくその協力国にもテロが及ぶ可能性があると明らかになり、世界が震撼した。

スペインのテロ事件の際にも、米国株とドル円は9.11テロの際と同じような値動きをした。テロ発生後の数日間でダウ平均は2%超下落し、テロ発生前に110円を超えていたドル円は、約3週間後に103円台まで円高が進んだ。ただ、その後まもなくダウ平均はテロ発生前の水準を回復し、ドル円も徐々に円安に振れた(グラフ参照)。

g20151116_2 (1)


2005年7月7日 ロンドン同時爆破事件

2005年7月7日、ロンドンの地下鉄3箇所で同時爆破事件が起きた。その後バスも爆破され、50名以上の方がテロの犠牲となった。

ロンドンの事件の際には、米国株はほとんどテロに対する反応を示さなかった。テロ発生後すぐに株価は上昇、10月に入るまで一貫してテロ発生前の株価を上回って推移した。ドル円も大きな方向感のある値動きとはならなかった(グラフ参照)。

g20151116_3 (1)

これまで見てきたように、テロ事件の発生がマーケットの大きなトレンドを変えるようなことはなかった。それはあの9.11テロの際においてもである。

あくまでも上記で見た過去3度のテロ後の値動きからすると、ということにはるが、もし短期的に米国株がテロを理由としてリスクオフの動きが進んだとすると、それはリバウンドが期待できる投資の好機となりうるかもしれない。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部

【関連リンク】
設備投資低迷に見るアベノミクスの機能不全
会社予想据え置きながらコンセンサス予想が上昇した銘柄は
【決算メモ】東レ(3402)
短期的なリスクオフ到来か
中国株 信用取引の証拠金率の引き上げやパリでのテロ事件から軟調なスタートか