「におい」こそが第一印象を決定する。そう言っても過言ではないほど、悪臭に厳しいのが現代社会だ。誰もが気にする加齢臭や口臭から、最近注目されている「イメージ臭」まで、失敗しない「においのマネジメント」を、体臭研究の第一人者・五味常明氏に教えていただいた。
「見た目」以上に深刻な「におい」の第一印象
目から入る視覚情報と、鼻から入る嗅覚情報。両者の違いは、脳内でどこを通るかにあります。
目から入った視覚情報は、脳にある視床で大まかに仕分けをされてから、大脳新皮質に送られます。それからようやく、好き/嫌い、快/不快といった感情が生まれます。
一方、鼻から入ってきた嗅覚情報は、鼻の上にある嗅球を通って、そこから直接、感情や記憶を司る大脳辺縁系に入っていきます。
この違いが何をもたらすのか。
見た目の第一印象なら、人はまだ「頭」で判断できます。たとえば、好感の持てない服装の人でも、「個人の趣味は尊重しなければ」とか「会社の規定があるのかな」などと考えることができます。
ところが、においの第一印象は感情と記憶に直接影響してしまいますから、「この人のにおいはどうしてもイヤ」ということになってしまう。しかも、見た目の第一印象よりはるかに強く記憶されます。あらゆる第一印象の中で最も影響があると言っていいでしょう。
さらに問題なのは、「くさい」と他人に言われると、あるいは「くさいと思われたのでは」と自分が思うだけでも、自分の存在自体を否定された気持ちになること。つまり、においは自己否定感につながりやすい。
さらに、「くさいかも」という意識のせいで、他人と接することやコミュニケーションに臆病になってしまうこともあります。つまり、においの第一印象で失敗すると、深刻な自信喪失につながりかねないわけです。
くさくないのに「くさい」と思われることも!?
怖いのは、「自分はくさいのでは」と自信を喪失した人は、実際よりももっとくさく他人に感じられてしまうということ。その雰囲気が「くさい」と感じられるのです。
これは「イメージ臭」と呼ばれる現象で、女性に嫌われるにおいの代表、中高年男性の「オヤジ臭」とも密接に関わっています。
中高年男性が「くさい」と言われるのは、実際のにおいによるところもありますが、その行動から来る視覚的、聴覚的な悪いイメージが影響している面も見逃せません。
たとえば、駅のホームで唾を吐いたり、食後に人前でつまようじを使ったり、オヤジギャグを連発したりといった不快に感じる行動をしていると、それが「くさい」という印象をもたらすのです。
ですから、においの第一印象を良くするためには、実際のにおいへの対応だけでなく、イメージ臭のコントロールも必要。気をつけるポイントは、次の3つです。
(1)服装……清潔感を重視。
(2)行動……エチケット、マナーとモラルを忘れない。
(3)性格・雰囲気……オドオドしていたり、陰気だったりすると、その雰囲気が「におう」。堂々としている人は「くさい」と言われにくい。
豊かな社会では人間関係が希薄化し、とくに清潔が好まれる日本では社会の「無臭化」がどんどん進んでいます。
その中で、最後に残ったにおいが体臭であり、だからこそ誰もが過敏なほど気にしています。ビジネスシーンでくさいのは「スメハラ(スメルハラスメント)」だとさえ言われる時代ですから、「においの第一印象」のマネジメントはより重要性を増してきています。