「突然の来客」も予測できる!?

ログをつけ始めると、仕事には一定の「サイクル」があることがわかってくると思います。たとえば、週の前半に会議やミーティングが開かれ、さまざまな案件が走り出す。半ばには営業に出向き、取引先との打ち合わせなどコアな業務が入ります。後半には、精算や報告書などの作業が増え、来週の予定に向けた準備の大詰めを迎える、などです。

このサイクルは業界や職種によってさまざまですが、仕事とは同じことの繰り返し、大きなルーティンの中で動いています。その多くは、曜日がベースであり、1週間分コツコツとログをつけてみると、自分の仕事の1週間の「段取り表」のようなものができ上がります。

これをベースに、次の週の予定表を組んでいけばいいのです。自分の過去ログに基づいた予定表なので、理想を投影したものではなく、実現可能なタスクのリストができ上がっています。

また、突然の打ち合わせや来客など変則的に入ってきた仕事も記録を残しておくことで、規則性があることに気がつけます。すると、この時間帯には別の仕事が舞い込みそうだ、などと予測がつきますので、仕事をよりうまく回すサイクルが作れるのです。

こうして組み立てられた予定表は、自分のスーツケースに収まる持ち物の分量が把握でき、整然と収められた状態。それでは、スーツケースからあふれてしまったタスクはどうしたらいいのでしょうか。

まず自分が本当にやるべき仕事なのか、再確認してください。絶対にやらないと仕事は進まないのか、部下や外に回すべきなのか、そもそも断わるべきなのか。この見極めができないと、いつまでも1人でたくさんの仕事を抱え込むことに。結果的に、作業の質や効率を落とすことにもつながりかねません。

自分の容量がわかると仕事の先送りがなくなる

この時間術の最大のメリットは、「自分のこなせる仕事容量」がわかることにあります。ここが正確に把握できないと、次々と仕事を引き受けてしまい、一体いつこの膨大な仕事にケリがつくのかわからないまま走り続けるということになります。

しかし、今日の勤務時間でこなせる仕事量が見えていれば、何時に現在の仕事が終わり、次の仕事に取りかかれるなどと、到着地点が把握できます。

時間管理術は、今の2倍、3倍の仕事をこなせる──という魔法ではありません。「時間は限られている」という厳然たる事実を認め、自分がこなせる仕事容量を客観的に見極め、現実に即してスケジュール管理をしていくツールです。

結果的に、精神的な余裕を保ちながら、安定的に成果を上げていけるようになるはずです。

佐々木 正悟(ささき しょうご)心理学ジャーナリスト
「時間が足りない」が口癖の現代人。その理由の一つは、限られた時間の中にタスクを詰め込みすぎることにある。「限られた時間の有効活用」ではなく、「一定の時間内に、どれだけのタスクをこなせるかを自覚すべき」と語るのは、心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏。その具体的な解決方法をうかがった。

(取材・構成 麻生泰子)(『 The 21 online 』2016年1月号より)

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