経済動向と住宅市場
2015年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、民間消費の大幅減少などから前期比▲0.3%のマイナス成長となった。雇用情勢は、人口減少、少子高齢化を背景とした人手不足の高まりにより改善がつついているが、民間消費は伸び悩んでいる。
2016年3月の日銀短観は、業況判断指数(DI)が、大企業製造業・非製造業ともに低下した。マイナス金利が追い風となる傾向がある不動産業はわずかに上昇した。しかし3ヵ月後の景況感は不動産業も含め、総じて数値が低下している(図表-1)。
ニッセイ基礎研究所は3月8日時点で、実質GDP成長率を2015年度0.7%、2016年度1.2%、2017年度0.0%と予測している(図表-2)(*1)。ただしこの予測は2017年4月の消費税率引上げを前提としており、それにともなう景気減速を反映しているが、引上げが見送りとなった場合には改善する可能性がある。
新設住宅着工戸数は、2014年3月の消費税率引上げの反動から2015年は回復してきており、2016年に入って以降は前年同月比プラスで推移、3月も前年同月比8.4%増となった。(図表-3)。
新築マンションについては、2016年1-3月の首都圏供給戸数は金融危機後の低迷で供給が少なかった2009年と同程度の低水準となっており(図表-4)、過去1年(2015年度)の供給戸数は前年比14.4%の減少となった。一方で、戸あたり価格、㎡坪単価は4年度連続して上昇、都心での富裕層向けの高額物件供給が価格水準を底上げしている。
実需層に手の届く新築マンションの供給が少ないことも影響し、中古マンションの流通量が増加、価格も顕著に上昇してきている。東日本不動産流通機構(レインズ)によれば、2016年第1四半期の首都圏中古マンションの成約件数は9,784件(前年同期比+3.4%)、同3月の平均㎡単価は47.78万円(前年同月比+5.5%)であった(図表-5)。
建築工事費は、15年前半がピークで後半からは低下傾向となっているが、引き続き高い水準にある(図表-6)。中古マンションの流通量増加の要因の一つに、建築費上昇の影響を直接受けないため割安とみられていることが挙げられるが、前述のように中古マンションの価格も上昇してきており、割安感は減りつつある。