雑談術,コミュニケーション
(写真=The 21 online/安田 正(パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表))

「ムダ話」を意味ある会話に変える

雑談を武器に、国内外で数々の一流ビジネスマンと交流し、人脈を広げてきたコミュニケーションのスペシャリスト・安田正氏。自身のノウハウを体系化した書籍『超一流の雑談力』はベストセラーとなり、研修においても数多くの「雑談ベタ」を救ってきた。そんな安田氏に雑談力向上の秘訣を聞いた。

「雑談」か「ムダ話」かが、一流と二流を分ける

ビジネスにおけるコミュニケーションにおいて、雑談力は、ロジカルに話す力と並ぶ重要なスキルである。しかしながら、日本人はこの両方が不得手だと安田氏は指摘する。とくに、雑談を「とりあえず間を持たせるためのムダ話」と捉えている人は、大きな間違いを犯していると話す。

「雑談とムダ話は別物です。その最大の違いは、目的の有無。ムダ話には目的がありませんが、雑談には、相手にこちらを好きになってもらい、『また会いたい』と思ってもらう、という大事な目的があります。これができなければ、本題である商談に入れないでしょう」

この目的を果たすには3つの段階がある、と安田氏。

「まず、(1)最初の2秒で好ましい印象を与えること。次に、(2)相手の話をよく聞くこと。そして、(3)話の内容に共感を示し、『あなたの話を理解している』と伝えること。雑談は、この3段階を踏めばうまくいきます」

必要なのは、話すスキルよりも聞くスキルだ。

「この点も、ただのおしゃべりやムダ話とは対照的ですね。ムダ話は話したいことを話すだけですが、雑談では、相手の話に集中し、相手の想いを理解することが重要。そして、相手に興味を持っていることを態度に示しながら聞くことが不可欠なのです。

ところが、多くのビジネスマンはこの基礎ができていない。無表情、低い声、鈍い反応。これでは『話を聞く気がないのでは?』と思われて当然です。『自分の言ったことが伝わっていない』と思うと、人は大きなストレスを感じます。そして『この人にはもう何も頼むまい』と決めてしまうでしょう。聞く力の不足は多大な損失を生むのです」

ここで安田氏が言う「聞く」とは、相手が口に出した言葉を聞くことだけに留まらない。

「相手は想いをそのまま言葉にするとは限りません。うまく言えないこともあれば、自分でも気づいていないこともあります。それを感じ取って、『こういうことを言いたいのだろうな』と察する。その推察を伝えて、そのとおりなら、相手は非常に喜びます。一見、他愛もない会話を交わしているだけに見える雑談は、実は『察する力』が試される勝負の場なのです」