笑う際に見える「歯の本数」も意識せよ!

雑談の目的を理解すれば、実際の場面で雑談をどう進めるべきかが見えてくる。

「まず、最初の2秒でするべきことはごくシンプルです。元気よく名前を名乗り、『よろしくお願いします!』と挨拶すれば、良い第一印象を持ってもらえます。

注意すべきは、表情と声。表情は、もちろん笑顔です。口を開いているときは、上の前歯が6本見えるくらい口角を上げて話す。閉じているときも、口角は常に上げていたほうがいいですね。声については、自分のドレミファの音階でファかソにしてください」

会話に入ったら、最初の口火は自分から切るべし、と安田氏。相手に話してもらうには、まず自己開示が必要だからだ。

「たとえば、『学生の頃はサッカー部だったのですが、今はご覧のとおりの体型で……』など、親しみの持てる話をすると、場の空気が和みます」

こうしてアイスブレークをしたあとは、聞き役に回って、相手を知ることに集中する。ここからが最も重要な段階だ。

「目的意識のない雑談はダラダラと間を持たせるような内容になりますが、雑談上手なビジネスマンは、着地点を目指して、2つの流れを意識します。

それは『広げる』流れと、『深める』流れです。『広げる』とは、さまざまな話題を投げかけて相手の興味のありかを探ること。相手が乗ってくる話題を見つけたら、それを深めていきます」

質問やあいづちで会話を盛り上げながら相手の様子を観察すれば、相手が話したがっている話題の見当がついてくる。

「趣味などの関心事の他、ちょっと自慢したい話、苦労話などを話し始めたらチャンスです。そのエピソードに耳を傾けて、『それは大変でしたね』と感情に寄り添ったり、『いつもそんなふうに周りを楽しませていらっしゃるんですね』と称賛したりと、相手が『そうなんだよ!』と言いそうなひと言を入れましょう。すると、信頼関係がどんどん深まっていきます」

普段からできる「雑談力」トレーニングとは?

安田氏が考える「雑談力」とは、相手の言葉を聞きながら、絶えず頭を回転させてその言葉を咀嚼し、理解する力と言える。

「文脈を読む力や洞察力はもちろん、ポイントを押さえた質問をすることや、相手の話を端的にまとめたひと言を言うこともしなければなりません。相手の話を邪魔しないように、ムダなく話す力も必要です。印象的に、わかりやすく話せれば、なお良いですね」

相手の話のポイントを捉える力は、訓練によって誰でも高められるという。

「私がいつもしているのは、本や雑誌を読んだあと、それを要約して、誰かに話すトレーニングです。相手が興味を持つような要約の仕方、話し方を工夫しています。

本でなくても、映画でもテレビ番組でもかまいません。私も、以前は『その時歴史が動いた』(NHK)というテレビ番組を使って要約トレーニングをしていました」

話の要約をするトレーニングとしては、図を描くことも有効だ。
「マルや矢印を使って話の内容を図解する習慣をつけると、読解力や洞察力が格段に伸びます。

私は、お客様との打ち合わせの際、ホワイトボードを使って、話をしながら同時進行で図にまとめ、理解が間違っていないか確認を取ることがよくあります。慣れた方は、ぜひ商談の際に図解をしながら話を聞いてみてください。『正確に理解して話を聞いてくれているな』と相手に伝わり、信頼がグッと増しますよ」

安田正(やすだ・ただし)〔株〕パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役
1990年より法人向け英語研修を始める。現在は英語の他、ロジカル・コミュニケーション、プレゼンテーション、対人対応コーチング、交渉などのビジネスコミュニケーションの領域で講師、コンサルタントとして活躍している。大手企業を中心に研修、コンサルティングを通して多くの役員との交流がある。著書に『英語はインド式で学べ!』(ダイヤモンド社)、『入社1年目からできる人になる43の考え方』(ワニブックス)、『一流社員が実践している仕事の哲学』『何でもわかりやくする技術、伝える技術』(クロスメディア・パブリッシング)、『一億稼ぐ話し方』(フォレスト出版)、『ロジカル・コミュニケーション』『ロジカル・ライティング』『会話のうまさで人生は決まる』(日本実業出版社)など多数。(取材・構成:林加愛)(『 The 21 online 』2016年5月号より)

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