PayPalによるトルコでのサービス一時停止が正式に発表された。金融規制強化と称して海外IT決済企業の締め出しに乗り出したトルコ銀行監視機構が、PayPalへの決済事業許可書の発行を拒否したことにより、撤退を余儀なくされた結果である。

6月6日以降はPayPalを通したトルコへの海外送金あるいはトルコからの海外送金が一切不可能になるため、個人消費者だけではなく海外オンライン小売業者などにも多大な影響を及ぼすことが予測される。

先進国、発展途上国問わず多くの国が金融システムの国際化に力を注いでいる中、トルコの時代を逆行する動きにPayPal側は驚きを隠せない様子だ。

情報漏えいの汚名返上と資金流通の透明化が目的?

新たに導入された新規制により、今後トルコでは国内にIT情報サービスの拠点を置く企業のみが決済事業許可書を取得できる。

背景に潜む理由として様々な憶測が飛び交っているが、ITインフラストラクチャーの強化と、テロリスト活動資金を含む通貨流通の監視を容易にする思惑が最も強いのではないだろうか。

トルコでは今年4月に人口の半分以上に値する5000万人の個人情報が漏えいしたが、「トルコ政府が牛耳るITインフラストラクチャーのぜい弱性」を世間に暴露する意図で仕組まれたといわれている。

銀行監視機構にとっては情報漏えいの汚名を返上すると同時に、資金の流出と流入を監視し、国内の海外送金事業を促進できる。まさに一石三鳥だ。しかしトルコの消費者はもちろん、トルコの家族や友人に送金を行っていた海外の消費者、または取引を行っていた海外の事業者などにとっては、不必要な不便性ばかりが目立つに違いない。

PayPalは米メディアを通して「自国内で情報テクノロジー・インフラストラクチャーを発展させたいというトルコの意欲は尊重する」とコメントする一方、PayPalが200カ国以上で取引を行う海外決済のパイオニアであることを主張。

今後も引き続き許可書の取得に向け、銀行監視機構に働きかけていく意気込みを見せているが、現時点ではサービス再開の目途が立っていないため、トルコでPayPal口座を保有している消費者に、すべての預金をトルコ銀行に移し替えるように推奨している。( FinTech online編集部

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