国が地方創生の推進を打ち出しているのを受け、地方の国立大を中心に「地方」や「地域」という言葉をつけた学部の新設ラッシュが続いている。今春からは栃木県宇都宮市の宇都宮大など5校で地方創生に向けた新学部が登場した。1期生たちは今後、本格的に地域へ飛び出し、地元の課題解決に挑む。
地方創生はほんのひと握りの自治体しか成功しない厳しい世界だが、大学生の若い視点が苦境に立つ地域を救うことはできるのだろうか。
宇都宮大は夏休みから栃木県内各地で地域学習
地方創生に取り組む新しい学部は、国立大だと2015年春に高知県高知市の高知大、2016年春に宇都宮大のほか、福井県福井市の福井大、愛媛県松山市の愛媛大、佐賀県佐賀市の佐賀大、宮崎県宮崎市の宮崎大に登場した。
このほか、静岡県静岡市の静岡大は学部横断教育プログラムとして地域創造学環を設けた。私立大では東京都豊島区の大正大が2016年度から地域創生学部を開設、宮城県や山形県を舞台に実習を重ね、地方創生の即戦力を世に送り出す考えだ。
宇都宮大は地域デザイン科学部を新設した。工学部にあった建設学科を母体に社会科学系学科を加え、理系2、文系1の学科で構成した文理融合学部だ。新入生は151人。7割が栃木県外の出身者で、東北や北関東出身者が多い。
より高度な研究に入るための入口と位置づけ、1年生の教育を進めている。入学後の3カ月間はさまざまな意思疎通法に触れる演習でコミュニケーション能力を養うとともに、自治体の首長や企業経営者を招いた授業で地方の現状について学んできた。
学生たちは夏休みから各学科の専門に応じて県内各地に出かけ、地域が抱える課題について考察、その結果を発表する。
塚本純宇都宮大地域デザイン科学部長は「都市と農村、山村を抱える栃木県は日本の縮図。現代社会を多面的に理解し、地域課題を解決できる人材を育成したい」と意気込んでいる。