愛媛大は後期から1期生全員がフィールドワーク

愛媛大が新設したのは社会共創学部。文理融合学部で、産業イノベーション学科など4学科を置き、その下に海洋生産科学など2~3のコースを設けている。新入生は191人。55%が愛媛県内から、残り45%が県外から進学してきた。

入学から3カ月間は予備知識を学ぶ期間と位置づけた。地域に飛び出して学習するのはこれから。夏休み中は産業イノベーション学科の学生が県内の自治体や企業を訪ね、地域の実情について学ぶ。

後期は191人全員が県内の4カ所ずつを回り、フィールドワークに入る。地域が抱える課題を把握したうえで、計画を立てて課題の解決方法を探り、プレゼンテーションする予定だ。

愛媛大社会共創学部は「地域の課題解決は簡単に片付く問題ではないが、学生たちがどんな解決策を提示してくれるのか楽しみ」と期待している。

宮崎大は地域資源創成学部を設けた。2年生の後期から地域創造、企業マネジメント、新産業創出の3コースに分かれ、地場産業の振興や地域資源の事業化に取り組む。1期生は96人。ざっと8割近くが宮崎県出身だ。

6月上旬には宮崎市の観光地青島など3カ所を3班に分かれて訪問、地域理解学習に取り組んだ。公民館などで地元の住民や県外からの移住者らを講師に地域の現状について説明を受け、意見交換している。

自治体や企業の幹部らを大学に招き、即戦力になる人材養成を目指した実践的なカリキュラムも設けた。宮崎県は人口減少が深刻な問題だけに、卒業後に地域のリーダーとなって引っ張っていく人材になってほしいという思いがそこに込められている。

宮崎大地域資源創成学部は「6月の地域学習で学生たちは地域の現状について理解を深めたようだ。卒業までに多くのことを学び、地域の活性化を担えるように成長してほしい」と目を細めている。

地域の魅力を見つけ、リーダーシップを発揮する人材を育成

地方創生を学ぶ学生たちに期待されるのは、若者ならではの視点で地域の魅力を見つけることだ。地方活性化を成功させるのは「よそ者、若者、変わり者」とよくいわれるが、その理由は地域にいる大多数の人たちと異なった視点を持っているからだ。

社会や業界の常識にとらわれず、柔軟な発想ができる若者の力が存分に発揮されれば、従来に見られなかった新しい提案が期待できるだろう。兵庫県神戸市の異人館通りを保存し、地域を代表する観光地に育て上げるきっかけを作ったのも、旅行で訪れた若者たちの声だった。

もう1つ期待されているのは、地域をまとめるリーダーに育つことだ。地域おこしの成功例といわれる地域には、仲間に共通の目的を提示し、励ますリーダーが存在している。良いアイデアを持ちながら、リーダー不在で地域の住民がバラバラに活動したため、失敗に終わった例は少なくない。

地域の魅力を発見する確かな目を持ち、リーダーシップを発揮できる人材を新学部が育成できれば、人口減少と高齢化に悩む地域に新しい光が届くかもしれない。新学部で学ぶ学生に対する地元の期待は大きい。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧 インタビュー
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。