米JPモルガン・チェースが英国1万6000人の雇用者を海外に移動させる可能性を再警告した。「ロンドンは今後も金融ハブとして機能しつづける」との見解を示す反面、「しかし欧州を動かすほどの力は損なわれる」と確信している。スイス銀行(USB)も同様の軌道修正を検討中であることを、明らかにしている。

Brexit後もロンドンへの残留を表明した米モルガン・スタンリーや、英離脱を新開地と受けとめているバークレイズ、HSBCなどとは別の方向性に進む意向だ。

英国を称賛する一方、撤退に傾くダイモンCEO

JPモルガンの拠点移動に関しては、国民投票以前からジェームズ・ダイモンCEOが繰り返し警告していた。

6月3日に英南部ボーンマス市で開催されたイベントでも、英離脱を強く反対していたジョージ・オズボーンと肩を並べ、「Brexitは英国に悲惨な結果をもたらす」と強調。英国を拠点とする多くの企業同様、EU加盟国内で自由に取引可能な「パスポート」失効への懸念を示した。

Brexitに向けて、「パスポート」の維持、あるいは代用となる何らかの優遇処置を、英政府がEUから勝ち取れるかどうか、これらの企業は息をひそめて見守っている。

ロンドンにおける金融機関の雇用口は3万5000件。JPモルガンはそのうち約半分に相当する1万6000人を、英国の6都市(ロンドン、ボーンマス、ベイジングストーク、スウィンドン 、エディンバラ、グラスゴー)で雇用する巨大金融機関だ。ボーンマスだけでも、技術者1300人を含む4000人を雇用している。

「才能、言語、文化、歴史、求めているすべての物が手に入る英国で、事業を展開するのは魅力的だ」と英国を絶賛するダイモンCEOの決断は、英国だけではなく、世界経済に大きな影響をおよぼすだろう。

ダイモンCEOが「ほかに選択肢がない」と判断した場合、1万6000件の雇用口はパリやフランクフルトに流出すると予想されている。