単一市場へのアクセスを確保できてもリスクは残る

JPモルガンとUBSの見解は、「ロンドンは金融都市としての王座を維持しつづける」というバークレイズやHSBCの姿勢と比較すると、英経済の未来に消極的だ。

JPモルガンのマルコム・バール氏は6月29日に発行された顧客宛てのメモの中で、Brexitによって多くの企業が海外に流出することが予想されるという前提で、「最大のダメージをこうむるセクターは金融機関である」と述べている。

例え英国が単一市場へのアクセス権を維持できたとしても、EU非加盟国としてのリスクは消えるわけではなく、不安定性との絶え間なき戦いが予測できる。

仮に残留派が勝利をおさめていれば、英経済は今後も成長を続けていたという見方が強い一方で、Brexit後にどのような未来が待ち受けているのかは、まだ誰にも分からない。現時点で確実にわかっているのは、交渉に最低でも2年を要することから、先行きが不透明な期間が数年間は継続するということだけだ。

しかしダイモンCEO自身も認めているように、Brexitがすでに引き起こしている不安定さは英国内だけではなく、欧州を含む世界各国に広がる問題である。

たとえ本拠地をフランスやドイツに移したとしても、英EU離脱後のEUが、今とはガラリと様変わりしている可能性もあるのではないだろうか。そうだとすれば、過去何世紀にもわたって築き上げられたロンドンの金融機関を他都市に移動させるのも、リスクをともなうという点では何ら変わりのないように思える。

「パスポート」という利点は重要だが、結局はゼロから始めるということになりかねない。

いずれにせよ離脱発表後の英政府の時間稼ぎが、何の収益ももたらさないのは明らかだ。9月までに予定されている新首相就任決定後、英国が今後進むべき道筋をどれほどスピーディーに、かつ明確に打ち出せるかに、ロンドンの金融都市としての王冠がかかっているのかも知れない。(ZUU online 編集部)

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