「引きずってしまう失敗」は客観視する

「客観イメージ」も、正しい使い方をすれば、プライベートのストレスを「引きずらない」ために役立ちます。

たとえば、家族と喧嘩をして、「言いすぎてしまった」と後悔している。それがストレスになっているとしましょう。このストレスを引きずってしまう人は、「言いすぎてしまった」という失敗を何度も五感でイメージしてしまっています。つまり、何度も失敗をリプレイしている状態なのです。だから、落ち込みから気持ちを切り替えられない。これでは問題は解決に向かいませんし、仕事にも悪影響が出るわけです。

こんなときに有効なのが、「客観イメージ」です。自分の失敗をまるで他人事のように見ることで、事実として思い出しはしても、五感までリプレイされることがなくなります。分析的に、冷静に事実を見られるので、「これが原因だったのか」「こうすれば解決できそうだ」という前向きな気づきも生まれてきます。これこそが、客観イメージの力です。

失敗によるストレスから気持ちを切り替えるためには、その失敗を客観イメージで見るようにしましょう。先ほどの例で言えば、家族と喧嘩をする自分を映画館のスクリーンに映し出し、それを客席から観るようにイメージします。

(写真=The 21 online)
(写真=The 21 online)

これも、最初はなかなかうまくできないはずです。実際にした失敗をイメージすると、つい鮮明に五感まで思い出してしまうものだからです。最初はスクリーンに映る自分をイメージできても、ほんの数秒でスクリーンの中の自分と一体化してしまい、失敗を五感でリプレイし始めるはずです。そうしたら、イメージを中断し、「リズム呼吸」を行ないます。

リズム呼吸とは、メンタルの調子が良いときの呼吸を意識的にすること。具体的には、時間をカウントしながら息を吐き出して苦しくならない長さを測ってから、その時間より短い秒数で息を吸います。たとえば「2秒吐いて、1秒吸う」といった、自分なりのラクなリズムを見つけましょう。

このリズム呼吸を数分続ければ、ネガティブな感情が消えます。そうしたら、再度、スクリーンに映る自分をイメージします。またすぐに五感イメージになってしまうので、中断してリズム呼吸。またスクリーンをイメージして……という繰り返しで、少しずつ自分の失敗を他人事のように見る訓練をしていきましょう。

以上のように、「こうなりたい」という目標は五感イメージで、2度と起きてほしくない失敗は客観イメージで、それぞれイメージすること。これが、プライベートのストレスを引きずることなく、気持ちをうまく切り替えて仕事に集中する方法です。

ところが実際には、多くの人が目標を客観イメージして他人事にしてしまい、その一方で、失敗をリアルに五感イメージして、繰り返しリプレイしてしまっています。これこそが、自滅につながる潜在意識の使い方であり、うつなどのメンタル不調にもつながるのです。

オンとオフの切り替えだけでなく、「失敗を引きずらず、気持ちを上手に切り替えて問題を解決する方法」として、五感イメージと客観イメージの二つのイメージ力をうまく活用していただきたいと思います。

岡本正善(おかもと・まさよし)メンタルトレーナー
1965年、東京都生まれ。東海大学卒業後、能力開発研究所を経て、メンタルトレーナーとして独立。プロゴルファーやサッカー選手などのメンタルトレーニングを行ない、当時無名だった新人プロゴルファーが次々とツアー優勝を飾ったことで一躍注目を浴びる。続いて専属トレーナーとして契約した福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)では1999年から2年連続リーグ優勝の快挙を達成。著書多数。(取材・構成:川端隆人)(『 The 21 online 』2016年6月号より)

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