「五感イメージ」と「客観イメージ」の力を身につけよう
30~40代は、子育てなど、家庭で果たすべき役割も大きくなる時期。プライベートでのストレスが仕事に悪影響をおよぼしてしまうことも少なくない。そんな最悪の事態を避けるために、プライベートのストレスを仕事に引きずらず、オンとオフを切り替える技術を身につけておきたい。メンタルトレーナーの岡本正善氏にお話をうかがった。
プライベートの悩みで集中できないときには?
プライベートでは、日々、さまざまな問題が起きます。それらが解決されないまま頭の中に並列的に存在していると、それで意識がいっぱいになって、仕事に集中できなくなる。そういう人は多いと思います。
この状態を解消するためには、意識を占めている問題を解決すればいいわけですが、なかなかそれができない。なぜなら、意識が「解決したい」と考えれば考えるほど、潜在意識は「解決したくない」と考えるからです。意識と潜在意識は真逆の働きをするのです。
とはいえ、何も考えずに「無」になるのも難しい。そこでカギとなるのが、イメージ力です。スポーツ選手がイメージトレーニングをするように、「こうなればいい」という、問題が解決した状態を具体的にイメージするのです。
たとえば、家事の分担のことで家族と喧嘩をしてしまい、何日か口もきいていない。それが気になって、仕事に落ち着いて取り組めていないとしましょう。そんなときは、悩むのではなく、「うまく家族が仲直りできて、夕食をみんなで楽しく食べている」という状態をイメージします。
五感を伴った具体的なイメージができると、潜在意識が、そこに到達するための準備を自動的にしてくれます。「朝、ちょっと早く起きて、掃除と洗濯をしよう」といった発想や行動が自然と出てきて、問題の解決につながるのです。
とくに寝ている間は、意識が邪魔をしないので、潜在意識がよく働きます。ですから、イメージは寝る前にするのがいいでしょう。
ポイントは、五感を使って、まるで自分の身に本当に起きたことのようにありありとイメージすること。先ほどの夕食のイメージなら、目の前にいる家族の笑顔、笑い声や食器の触れあう音、料理の香りや味……と、五感すべてを使って「そうなってほしい」イメージをします。ここまでやれば、潜在意識がそこに向かって働いてくれますし、意識の上に悩みやストレスが残ることもありません。
ただ、この五感でイメージすることは、苦手とする人が少なくありません。テレビや映画など、多くの映像に当たり前に囲まれて育っている現代人は、あるシーンをイメージしようとすると、カメラのような第三者の視点でイメージしてしまいがち。つまり、他人事を見るかのような「客観イメージ」をしてしまうのです。
では、どうすれば、客観イメージではなく、「五感イメージ」ができるようになるのか。トレーニング方法としてお勧めなのが、お風呂をイメージすることです。入浴は、誰もが何度も経験している、気持ちの良い状態ですから、イメージしやすいのです。
お湯の温かさ、湯煙、風呂桶を置く音、石鹸や入浴剤の香り……と、お風呂に入っている状態を五感でイメージしてみましょう。すると、実際に入浴しているかのように、身体が温かくなってくるはずです。
このトレーニングを続けることで、「こうなってほしい」というポジティブな場面を五感でイメージできるようになってきます。
お風呂だけでなく、自分が好きな趣味に没頭しているところなどをイメージするのもいいでしょう。