英離脱の火種がイタリアの銀行を直撃。以前から大量の不良債権を抱えていたイタリアの銀行が、深刻な危機にさらされている。

このままイタリアが景気後退に突入すれば、Brexitですでに激震している欧州全体を、さらなる混乱に巻き込む恐れがあり、イタリア政府はモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行への資本注入の承認について、EU当局と交渉中だと報じられている。

離脱、銀行危機、EU加盟国のあちらこちらから聞こえる国民投票を求める声。設立以来最大の転換期がEUにもたらす未来とは、一体どのようなものになるのだろう。

伊銀行の不良債権総額は、リーマンショック後の米国の10倍

長年にわたる融資基準の緩さに足をすくわれ、銀行融資の約17%が不良債権化しているというイタリア。この数字は、リーマンショック後に米国が抱えた不良債権の10倍に値する。

米ウォール・ストリート・ジャーナル誌の報道によると、不良債権総額は4000億ドル(約40兆3040億円)にものぼり、ムーディーズ、スタンダード&プアーズと並ぶ世界三大信用格付け会社、フィッチ・レーティングスには「ユーロ最弱国」と称されている。

6月23日の英国民投票日以降、世界中の金融機関に試練の時が訪れているが、経済、政治基盤ともに不安定なイタリアの受けた打撃は、予想を上回る致命的なものだった。

Brexit決定直後、イタリアの銀行株の多くは30%を上回る急落を見せ、もともと不安定だった経済基盤を一気に根こそぎ崩壊させた。

米CNBCのデータによると、欧州の主要銀行の一つといわれるウニクレーディト・イタリアーノ銀行株は、今年に入って60%低下。

イングランド銀行(BoE)は今月4日、イタリアの銀行で最大の不良債権を抱えるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行に、今後3年間で不良債権を469億ユーロ(約5兆2332億円)から30%削減するようにと、書簡で要求している。