不良債権基金「アトランテ」は焼石に水
今年4月にはイタリアの銀行監督当局と金融機関によって、不良債権の分離を支援する基金「アトランテ」が設立されたが、アナリストからは「40億から60億ユーロ(約4459億1950万円から6688億7925万円)いう規模では焼石に水だ」という意見が聞かれた。
そうした懸念は見事に的中。一時的にはモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ株が9.8%高、ウニクレディト株が2.4%高となるなど、イタリアの銀行に短期間恩恵をもたらしたが、他のEU加盟国(ドイツ2.3%、フランス3.7%)と比較しても桁違いの不良債権を、根本的に解消する決め手には欠けていた。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのシニアリサーチ・マネージャー、ジュリアン・ジャーモズコ氏は、「不良債権を帳簿から抹消するべきだ」と提案。これ以上投資家の不安を掻き立てれば、どんな結果が待ち受けているかは想像するにたやすい。
フィッチのアナリストは、アトランテから援助を得ることは可能だが、WSJに報じられたほどに不良債権額が膨れ上がっているのであれば、「基金の規模を広げる必要がある」と主張。より広範囲な支援を求め、不良債権にあてることができれば、危機を最小限に抑えられる可能性が高まるというわけだ。
現時点で検討されている具体策は政府による資本注入だが、金融機関への公的援助に関するEU規則の適用が免除される必要があり、実施には全加盟国からの支持が求められる。
それとともに今年EUで導入されたベイルイン制度が、イタリアの救済に適用されるか否かという問題も浮上してくる。この制度が適用された場合、劣後債保有者に負担が課されることになる。
火種となった英国でも国債利回りが過去最低を更新、一躍バブルを築き上げた不動産ファンドへの解約停止が相次ぐなど、離脱決定の影響がますます色濃くなり始めた。過去に数々の試練を乗り越えてきたEU。その行く末が、これほどまでに不透明に見えたことはない。(ZUU online 編集部)
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