返礼品の平均還元率は40%強

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では、競争に打ち勝つ為に各地方自治体はどの程度の経費を支払っているのだろうか。そこでふるさと納税の募集や受け入れ等に伴う経費(平成27年度)の全自治体合計額が、同年度のふるさと納税の受入額(全国計)に占める割合を計算した。結果は図表2の通りであるが、返礼品の調達、送付に係る費用が40%を超えている。つまり、返礼品の還元率が平均40%程度であることを意味する。

現在は、返礼品の量・質が寄附金額に比例するのが主流であるが、2年前は、一定額以上の寄付金に対し一律の返礼品を送付するのが主流であった。そのため、1万円を寄附して3千円の返礼品を受け取った人が10人いるのか、1人が10万円を寄附して3千円の返礼品を受け取ったのかはわからず、手元のサンプリング調査データでは当時の還元率を計算することは不可能だ。

しかし、寄附者全員が返礼品を受け取れる最低金額を寄附していたという極端な仮定の下でも、当時の還元率の平均は30%に満たない。つまり、少なく見積もっても、この2年間で平均還元率が10%以上、上昇したと考えられる。

ふるさと納税制度の実質予算は年間764億円

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もちろん、経費は金額の多寡ではなく、それによって生み出される便益との比較で判断されるべきだ。事実、公共事業の評価手法の一つに費用便益分析がある。公共事業がもたらす便益の現在価値を公共事業の費用の現在価値で割った値を費用便益比とし、費用便益比が高いほどよいと考える手法である。

1を超えるとその事業は妥当と判断される。ちなみに、既に中止が決定している某都市・幹線鉄道整備事業の費用便益比は1.7だったようだ(*3)。平成27年度単年度で、少なくとも、1,300億円(764億円の1.7倍相当)の便益があったことを願いたい。

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(*1)平成26年度のふるさと納税受け入れ件数1,912,922件に対し、平成26年中のふるさと納税にかかる寄附金税額控除適用者数が435,720人である。このことから、ふるさと納税を行う納税者の寄附先数の平均は4.4である。また、ふるさと納税ワンストップ特例制度を適用するには寄附先を5団体以下に抑える必要があることから、妥当な仮定と考える。
(*2)第一の矢と第三の矢にまたがる年金生活者等支援臨時福祉給付金に係る予算は案分した。
(*3)山田宏「公共事業における費用便益分析の役割」『立法と調査』参議院事務局企画調整室編、2006、通号256参照
なお、中止理由は費用便益比の不確実性(リスク)であって、は費用便益比自体ではない。
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高岡和佳子(たかおか わかこ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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