投資信託,損失,変わり種
(写真=Thinkstock/Getty Images)

「投資信託が売れない」それが現場の実感だ。一時的な現象ではない。潮目は変わったのだ。投資信託の販売に携わっている多くの銀行員はそう感じていることだろう。

いまや銀行にとって投資信託の販売手数料は欠かすことのできない収益源だ。「売れない」では済まされない。

投資信託が売れなくなって困るのは銀行である。だが、あなたもこの現状を受け止めておく必要がある。なぜなら、銀行は必ず次の手を打ってくるからだ。その時、とんでもない投資信託をつかまされないためにも、銀行の窮状を知っておいて欲しい。

「なぜ、投資信託が売れないんだ」

投資信託が売れていないのは、データにも明確に示されている。

投資信託協会が公表している公募投資信託の資産増減状況によると「2016年6月末の純資産総額は約86兆円」である。1年前と比較して約14兆円も減少している計算だ。

ちなみに、この1年で投資信託の本数は269本増加し、5929本を販売している。それでも資産の減少に歯止めがかからないのが現状だ。

「なぜ、投資信託が売れないんだ」

銀行の経営者や本部の人間は頭を悩ませている。魅力的な商品がないからなのか、それとも営業力が低下しているからか。

現場の人間にしか分からないことがある

答えは簡単だ。潮目が変わったのだ。1年前までは株価は上昇基調にあり、為替も円安基調にあった。よほどおかしな商品をつかまない限り、何を買ってもそれなりに利益を出すことができた相場だったのだ。

利益を出したお客様は次に新たな投資信託を購入する。新規のお客様も次々に獲得できた。しかし、相場が下落基調に転じれば、投資信託を保有しているお客様は含み損を抱え、身動きが取れなくなってしまう。当然、相場が悪ければ新規のお客様の獲得も難しい。それだけのことなのだ。

結局のところ、投資信託の販売は相場に大きく左右されるものなのだ。どんなに営業努力をしたところで、相場が悪い状況で報われるとは限らない。むしろその努力が裏目に出れば、お客様に迷惑をかけることになりかねない。それはあまりにも単純な真実だ。

旧日本軍が突き進んだ敗戦への悲劇そのもの

銀行の体質というのは、どうも旧日本軍の悪い点をそっくり真似ているように思えてならない。現状認識が甘く、戦略的な発想ができない。耳の痛い話を上申すれば疎んじられ、いつの間にか経営者は裸の王様になってしまう。

いま銀行は、政府日銀の金融緩和政策によって収益を圧迫されている。どんなに融資を伸ばしても適切な利ザヤを確保することが困難で、貸せば貸すほど収益が圧迫される事態に陥っている。

だからこそ、銀行は投資信託などの販売で収益を稼がなければならない。経営者の頭の中はそればかりなのだろう。「なぜ投資信託が売れないんだ?」という問い合わせがしばしばある。

直接私にその疑問が投げかけられれば、こう答えるだろう。「今は投資信託が売れる時期ではありません。投資信託にこだわっていると、時代に取り残されます。次にどんな金融商品を売っていかなければならないのかを真剣に考える時期が来ています」と。

ところが、現実はそうはいかない。上に提出される報告書はいつもこうだ。「現場の営業力が低下しています」「商品ラインナップが少なく、もっと投資信託の種類を増やす必要があります」

その結果、販売部隊にこれまで以上の人員が投入される。そして取り扱う投資信託の数もどんどん増えていく。

私に言わせると、新たに投入された戦力は、まるで「ひよっこ」である。新たに追加される投資信託も時代錯誤のものが多い。これらの結果が検証されることなく、使い物にならない新兵と、使い物にならない粗悪な武器がどんどん配備されていくのだ。それは、旧日本軍が突き進んだ敗戦への悲劇そのもののようでもある。

繰り返し言うが、いまはどんなに営業力を強化しても、どんなに品揃えを充実させても売れないものは売れないのだ。

現場で投資信託を販売している人間にしか分からないことがある。もう一度言おう。潮目は変わったのだ。