【連載 経営トップの挑戦】 第9回 ChatWork〔株〕代表取締役 山本敏行
「以前はメールを使っていたけれども、今はLINEなどのチャットツールを使っている」という人は多いだろう。チャットのほうが速く、効率的にコミュニケーションが取れる。また、グループでの情報共有も容易だ。そうしたメリットを享受するため、ビジネスでもチャットツールを使おうという動きが世界中で進んでいる。
そして、数多くのビジネス用チャットツールがリリースされてきた中で、とくに成長しているものの一つが、日本発の『チャットワーク』だ。
2011年にリリースされ、今や世界205以上の国と地域の10万社以上が利用するまでになっている。『チャットワーク』を開発・運営するベンチャー企業であるChatWork〔株〕の創業社長・山本敏行氏にお話をうかがった。
創業以来10年以上、チャットを使ってきたからこそのサービス
――チャットワークには、どういった業種や規模のユーザーが多いのですか?
山本 フリーランスで仕事をされている方から従業員数千名の上場企業まで、幅広く使っていただいています。業種も、IT系はもちろんのこと、士業、介護、農業などさまざま。製造業のユーザーも、これからさらに増えていく見込みです。
――ビジネス用のチャットツールが他社からもリリースされてきた中で、チャットワークが急速に普及した要因はどこにあるのでしょうか?
山本 まず、フリーミアムのサービスだということがあると思います。グループチャットの数が14までなら無料です。
15以上になると1人月額500円(『ビジネスプラン』の場合。フリーランス向けの『パーソナルプラン』は1人月額400円)がかかるようになりますが、14ものグループチャットを使われている方はチャットワークに十分な魅力を感じていただいている方ですから、そのまま使い続けていただけることが多いですね。
それから、メールの代替を目指して開発したサービスなので、社内はもちろんのこと、社外とのコミュニケーションも取りやすい仕様にしていることも要因でしょう。たとえば、チャットに参加できる人をメールアドレスのドメインで制限しているサービスが多いのですが、チャットワークにはどんなドメインのメールアドレスでも参加できます。
2011年3月というリリースの時期も良かったと思います。当時、ビジネス用のチャットツールをリリースしている企業は、当社の他にはまだ米国の1社しかありませんでした。
そして、2000年の創業時から、当社では仕事でチャットを使っていたこと。チャットが流行ってきたからチャットワークを開発したのではなく、ICQ、MSNメッセンジャー、スカイプといったサービスを10年以上使ってきて、仕事で利用するうえで物足りなさを感じて開発したのがチャットワークなのです。自分たちで言うのもなんですが、「わかっている人が作っている」サービスなわけです。ですから、ユーザーのニーズとの乖離がないサービスが作れる。これが一番の強みです。
たとえば、チャットワークにはタスク管理の機能がついています。タスク管理は、チャットツールでしなくても、別のツールを使えばいいと考えるのが普通でしょう。けれども、当社では、自分たちの経験から、タスク管理はチャットツールでしたほうが効率的だし間違いがないと考えています。
逆に、普通ならつけるのでしょうけれども、チャットワークにはつけていない機能もあります。たとえば、相手がオンラインかオフラインかがわかる機能です。オンラインの状態で他の作業に集中したいときにチャットで話しかけられると邪魔になることを経験しているからです。