誰もが忘れられない1本を持っている。そう言っても過言ではないくらい、広く愛され続けるスタジオジブリ作品。数々の名作を生み出してきた同社だが、その台所事情は決して穏やかなものではない。常にギリギリの努力を迫られ続けているジブリが、新作映画の公開を記念して、総選挙なるものを開催している。
1位になったら劇場公開、スタジオジブリの総選挙
「スタジオジブリ総選挙」は、第69回カンヌ国際映画祭で「ある視点」特別賞を受賞した新作である「レッドタートル ― ある島の物語」が、2016年9月17日に全国ロードショーを迎えるのを記念してのイベントだ。
8月13日から28日の間に、「風の谷のナウシカ」から「思い出のマーニー」までのジブリ21作品の中から、スクリーンで観たい作品を選んで投票する。投票は1票だけだが、最も多くの票を集めた一作品が、TOHOシネマズの六本木ヒルズ、名古屋ベイシティ、梅田、天神、および札幌シネマフロンティアの計5つの劇場で上映される。
8月13日から20日までの集計分から、すでに中間発表が行われている。公開順に「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「魔女の宅急便」、「もののけ姫」、「千と千尋の神隠し」が上位5作品に名を連ねた。「魔女の宅急便」を除いては、全て宮﨑駿氏が原作・脚本・監督を務めている。いずれも根強いファンを持つ作品だろう。
宮﨑氏引退後のジブリを占う勝負作は日仏合作
長く愛されるスタジオジブリの製作部門が、突如解体するというニュースが流れ、多くのジブリファンを驚かせたのは2014年8月のこと。「思い出のマーニー」がジブリの最終作となってしまったと思っていたファンも多いはずだ。だが、そんなところに今回の「最新作」登場の発表があり、戸惑いを覚えた人も少なくないはずだ。
実のところ、今回公開される「レッドタートル」は日仏の合作ということで、これまでのジブリ作品とは大きく異なる。2000年に公開された、わずか8分間の「岸辺のふたり」というマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督作品が、珠玉の短編アニメとして、2001年米国アカデミー賞をはじめ数々の映画祭で激賛をもって迎えられた。
この作品に惚れ込んだスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、同じ監督による長編映画を観てみたい、という思ったのが出発点だったという。マイケル監督はじめての長編映画は監督の要望で、高畑監督以下スタジオジブリとの入念な打ち合わせを重ねながら制作された。アニメーション制作の実作業はフランスを中心に行われ、完成には8年もの歳月が費やされた。