コストを賄うには、毎年1本100億超えのヒット作が必要

そもそも、数多くの名作を生み出してきたスタジオジブリが、映画製作部門の解体にいたった背景には、いくつかの要因がある。最たるものは会社を維持するためのコストが、膨らみすぎていたことだろう。

日本のアニメの制作費は、「エヴァンゲリオン 新劇場版:破」が約6億円、「映画AKIRA」が10億円など、概ね5億円から10億円程度のものが多い。対するジブリ作品は、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」が20億円、「ハウルの動く城」が24億円、「崖の上のポニョ」は34億円、制作期間が8年に及んだ高畑勲監督の「かぐや姫の物語」は51億5000万円と、きわめて高額の制作費がかけられている。

年間20億円にのぼるという人件費と合わせて考えると、年に1本程度の100億超え作品が必要になる。だが、実際に興行収入が100億を超えたアニメは、日本映画史上8作しかない。確かに「千と千尋の神隠し」は歴代トップとなる304億円の興行収入を上げ、「ハウルの動く城」が196億円、「もののけ姫」は興行収入の193億円に加えて配給収入113億円を挙げている。上記3作品に加えて「崖の上のポニョ」と「風立ちぬ」と、ジブリ作品が8作品のうちの5作品を占めているのだ。

けれども、150億円の「アナと雪の女王」、154億円の「トイストーリー3」など、けた違いの制作費をつぎ込んで、世界中に作品を送り出しているディズニーピクサーと戦いながら、100億超え作品を量産するのは、きわめて困難な試みだと言わざるを得ない。

宮崎駿氏最後の監督作品として話題になった「風立ちぬ」は、120億2000万円の興行収入を得たが、宮崎駿監督作品以外には100億円超の作品がなく、米林宏昌監督の「借り暮らしのアリエッティ」の92.5億円が最高だった。宮崎駿監督引退後の後継者と言える人材が育たなかった点も、ジブリの経営圧迫要因として見逃せない。

制作拠点を海外に移すのはリスクヘッジ

高騰する人件費に苦しんでいるのは、もちろんスタジオジブリだけではない。国内の多くのアニメ制作会社は、人件費のリスクヘッジとして海外での制作を進めている。特にタイやインドなど、アジア地域での制作が盛んになっている。

そうした中で、プロデューサーとしての役割に徹し、制作を海外に任せる一方で、過去の作品の活用を図るというジブリ総選挙の試みが、「妥当な経営判断」と評価されるかどうかに注目だ。

日本アニメの中でも、ブランド力などでトップクラスのスタジオジブリ。子供の頃も、子どもと大人の間にいた頃も、もちろん大人になってからも、色褪せることなく記憶に残る、ジブリ作品がある人も多いだろう。総選挙の投票は2日後までだが、投票してみてはいかがだろうか。(ZUU online編集部)

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