なぜ「ビッグマック」なのか?

ビッグマックが指標として選ばれた理由は、世界中でほぼ同じ品質、サイズのものを提供していることから、各国購買力の比較の基準にしやすい商品だからです。

世界100ヵ国以上で販売されているビッグマックには、一般的に広く流通している原材料(小麦粉、肉、野菜など)が使われています。そこに店舗の運営費などさまざまな諸経費を加算し、最終的な販売価格が決定されます。

しかし、国によって価格差があり、各国の購買力に差があることが比較できるようになっています。

ビッグマック指数で比較してみると・・・

それでは実際のビッグマック価格から、各国の購買力を比較してみましょう。

2016年7月のビッグマック指数に基づいて具体的な例を挙げると、1ドル=102.52円で取引されていた2016年7月末当時、米国ではビッグマックが5.04ドルであったのに対し、日本では370円でした。つまり、ビックマックを基準に考えると、5.04ドル=370円ということになります。

これではわかりづらいので、1ドル=○○円になおしてみましょう。5.04ドル=370円ですから、両辺を5.04ドルで割ればいいですね。1ドル=(370円÷5.04ドル)=73.41円という計算でビックマックを基準とした購買力平価が算出されます。実際の為替レートは1ドル=102.52円なので、これらを比較すると29.1円の差が生じており、ビックマックを基準とした購買力平価(1ドル=73.41円)に比べ、実際の為替レートでは円が28.39%割安になっていることがわかります。つまり約30%ほど円の価値は過小評価されているのです。

同じ時期、スイスのビッグマックの価格を見てみましょう。実際の為替相場では1ドル=0.97スイスフランで取引されていた一方、スイスのビッグマックの価格は6.50スイスフランでしたので、ビックマックを基準とした購買力平価(ビックマック指数)は5.04ドル=6.50スイスフラン、つまり1ドル=1.29スイスフラン(6.50スイスフラン÷5.04ドル)となります。つまり、実際の為替相場のスイスフランはビックマック指数に比べて32.96%も割高になっていたということがわかります。スイスの他には、ノルウェー、スウェーデンといった国の通貨の価値がそれぞれ10.15%、4.29%過大評価されていました。

ただし、ビッグマックも、世界中の国で販売されているわけではありませんし、購買力平価の考え方自体が先にも述べたように「お金や物、サービスの取引が完全に自由に行える市場」を前提とした理論の上に成り立っているものであり、現実世界で常に通用するものではありませんので、あくまでもツールのひとつとして参考にするのがよいでしょう。

ビッグマック指数以外にもトール・ラテ指数、iPod指数もある

ビッグマック指数以外にも身近なモノによる指標としては、エコノミスト誌による「スターバックス・トールラテ指数」やオーストラリア・コモンウェルス銀行による「iPod指数」なるものを発表しています。これらの指数はビッグマック指数に類似しているようで、実は各国異なる食文化の影響を受けにくいという利点があるといわれています。

ビッグマック指数とトールラテ指数、iPod指数をそれぞれ比較してみると、また違った結果が出ておもしろいかもしれません。(提供: お金のキャンパス

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