ビーツ・エレクトロニクスの買収
平成26年5月28日に大型買収の話題が飛び込んできました。ブルームバーグより、あのアップルがヘッドフォンメーカーでストリーミング音楽サービス会社のビーツ・エレクトロニクスを30億ドル(約3,060億円)で買収することで合意しました。ビーツの創業者であるドクター・ドレ、ジミー・アイボン両氏はアップル入りする予定です。 今回の買収でビーツ・エレクトロニクスが展開している音楽配信サービスの「ビーツ・ミュージック」も手にします。アップルにはiTunesという音楽ダウンロードサービスがありますが、ビーツ・ミュージックを手に入れれば、若者に人気がある音楽ストリーミングサービスの展開もできるようになります。
今回の買収については、ジョブズとの戦略の違いが明らかになりました。30億ドルという買収はアップル史上最大規模となります。小さな買収を繰り返し、買収した企業の人材と技術を我が物にしてきたジョブズの時にはまず想像できなかった買収です。ジョブズとティムクックの違いを比べながら、今後のアップルを検証してみました。
(1)ジョブズ時代のアップル
スティーブ・ジョブズについてはいろいろな本が出版されており、それらを読んだ方も多いと思います。自分が設立した会社であるアップルを追い出されたジョブズは、NeXT Computerを設立し、そのNeXT Computerを後年アップルに買収させることでアップルに復帰をしています。その後はMacの快進撃、iPhoneの登場と世界的に知られるところです。また、アップルに復帰後に暫定CEOに就任して以来、基本給与として、年1ドルしか受け取っていなかったことは有名な話です。
ジョブズは技術に貪欲で、気になる技術を持つ会社を次々に買収してきています。PA Semi(半導体メーカー)、Placebase(オンライン地図開発)、Lala(オンライン音楽サービス)、Siri(音声アシスタントサービス)、Polar Rose(顔認証技術)等々、共通するのは比較的小ぶりであるということです。そして、手に入れた技術はすぐさま製品に反映してきました。アップルが新製品発表会を行うと、「また、ジョブズがとんでもないものを出してくるのではないか」とマスコミやアップルユーザーを始め多くの人が注目をした時代でもありました。
(2)ティムクックとは?
ティム・クックは通称です。本名はティモシー・D・クックといいます。アップル社に入社したのは、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した翌年の1998年です。2005年にはナイキの社外取締役に就任しました。アップルに入社する前はインテリジェントエレクトロニクス 、IBM、コンパックで役員などを経験してきました。アップル入社後はワールドワイドオペレーション担当シニアバイスプレジデント、ワールドワイドセールス担当、ワールドワイドセールス&オペレーションズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを歴任し、2005年10月にCOOとなりました。そして、2011年8月に
スティーブ・ジョブズ
が引退した後、CEOに就任しています。任された職務などを見るとジョブズからは厚い信頼を得ていたことがわかります。CEOへの就任もジョブズの強い推薦があったと言われています。物腰の柔らかく、丁寧な応対は、アップルの新製品発表会でも感じることができます。