ドナルド・トランプ大統領誕生で価格上昇が見られたものの、わずか数時間で落ちつきを取り戻したビットコイン。
選挙開催日の上昇率も期待されていたほどではなく、効果もごく一時的であったため、「ビットコインはまだ安全資産の域に達していない」との見解を示す専門家が多い。対する金は急激な高騰を維持している。
価格変動の激しさがプラスにもマイナスにもなる
「トランプ政権の発足でビットコイン価格が急騰する」との説は、トランプ大統領の出馬が決定した当時から浮上していた。過激な言動で「暴言王」の異名をとったトランプ大統領の誕生で全世界に不安感が増し、安全資産としてビットコインの評価があがるという筋書きだ。
コインデスクのデータでは、投票日の11月9日、価格は708.43ドルから737.61ドル(約7万4796円から7万7876円)まで一気に跳ねあがり、最高値は737.78ドル(約7万7990円)を記録。しかし同日中に下落が始まり、翌日には714.13ドル(約7万5397円)までさがった。高騰が約1週間続いた英国のEU離脱決定よりも、はるかに短期間に熱狂が冷めた感が強い。
ビットコイン価格が金に代表されるほかの安全資産同様、世界情勢と並行するのは疑う余地がない。米投資銀行、ニードハム・アンド・カンパニーは今年上旬、コア技術の向上と基盤形成を必須条件に「ビットコイン価格が848ドル(約8万9472円)まであがる」と予想していた。予想価格には手が届いていないものの、エクイティー・リサーチ部門のスペンサー・ボガード氏は、「ビットコインが着実に安全資産としての地位を確立していっている」と主張している。
しかしこうしたポジティブな見解に疑念をはさむ専門家も多い。米投資会社、ウェッド・セキュリティーのリサーチ部門ディレクター、ジル・ルリア氏は、ビットコインが「ユニークな投資対象となる」ことは認めているが、「安全資産どころか、証券や不動産などと並ぶ資産として認識される段階にも至っていない」と辛口だ。ビットコインは技術上の問題も含め、すべてのリスクを十分に理解している投資家向けであるという。
またビットコイン取引所、コインフロアーのマーク・ラムCEOも、ビットコインを安全資産と見なすには時期尚早との見解を示している。
過去1年間に価格が約2倍に上昇している事実は、ポジティブな要素もネガティブな要素も含んでいるといえる。歴史の浅い投資対象であることに加え、変動幅の広さを歓迎するか拒絶するかの差が生じるのは、どうしても避けられない。ビットコイン人気が高まっている反面、高リスクな投資対象の域から脱出するにはまだまだ時間を要しそうだ。( FinTech online編集部 )
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