日本の評論家や報道機関のほとんどが予想していなかったドナルド・トランプ氏の勝利。アメリカ国内はもちろん世界各国にその衝撃が拡がるなか、政権移行の準備が着々と進んでいる。その移行を進めるチームの責任者として組閣を主導するのがマイク・ペンス氏、トランプ政権のキーマンと目される次期副大統領である。

下院議員、州知事を経験した「極右の保守原則論者」

マイケル・リチャード・マイク・ペンス氏は1959年6月7日、インディアナ州に生まれた。両親はアイルランドからの移民で、父親はガソリン・スタンドを営んでいた。

地元のハノーバー大学を卒業したペンスは、インディアナ大学法科大学院に進んで法務博士号を取得。弁護士として活動したあと、2度の落選を乗り越えて2000年に米国下院議員に当選する。下院議員としては2001年から2013年まで政治活動を行い、そのうち3年にわたって下院共和党会議の議長も務めた。2013年にはインディアナ州の知事に就任。頻繁に来日して日系企業の誘致に取り組むなど、親日派の一面もある。

大学時代に回心したというペンスは自身のアイデンティティについて、「第一にキリスト教徒、次に保守主義者、最後に共和党員」と述べている。その発言のとおり、彼の政治姿勢を端的に表現すれば、「極右の保守原則論者」である。同性婚禁止、中絶違法化に積極的で、下院議員時代には同性婚禁止法を共同発議したこともある。

2015年には、企業や組織が宗教的理由に基づいてLGBTへのサービスを拒否し、差別を正当化できる「宗教自由修復法」(反LGBT法とも言う)に署名し発効させている(のちに反対を受けて改正)。次期大統領をも凌ぐある種の過激さを持ち合わせた人物でもあるのだ。

地球温暖化否定、テロ対策強化──トランプとの共通点

ペンス氏とトランプ氏の政策には、いくつかの共通点が見出せる。一つは地球温暖化防止に対する姿勢である。インディアナ州では現在でも石炭の採掘が重要な産業であることから、ペンス氏は「地球温暖化はただの俗説」と発言したことがある。トランプ氏も人類の産業活動による地球温暖化という認識については、否定する発言を繰り返してきた。

ペンス氏とトランプ氏の見解がもっとも合致しているのは、テロ対策についてだと言われる。選挙期間中には双方とも、オバマ政権の対応は不充分で、イスラム過激主義者が起こしている問題にもっと力を入れるべきだったと批判。ただし、トランプ氏が主張したイスラム教徒の入国禁止については、ペンス氏は批判的な態度を取っていた。