結果の概要:失業率が07年8月以来の水準に低下
12月2日、米国労働省(BLS)は11月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で17.8万人の増加(1)(前月改定値:+14.2万人)となり、下方修正された前月改定値からは増加したものの、市場予想の+18.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は小幅ながら下回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.6%(前月:4.9%、市場予想:4.9%)とこちらは前月、市場予想を下回り07年8月以来の水準に低下した(後掲図表6参照)。一方、労働参加率(2)は62.7%(前月:62.8%)とこちらは、2ヵ月連続の低下となった(後掲図表5参照)。
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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
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結果の評価:労働参加率、賃金は下振れも、12月利上げを後押しする結果
11月の非農業部門雇用者数は市場予想を小幅に下回ったものの、16年初来の月間平均増加数(18.0万人)程度の伸びとなっており、雇用の堅調な増加が確認できる。当面、雇用者数は10万人台半ばから後半での推移が続こう。
一方、家計調査では失業率が前月から▲0.3%ポイント低下し、FOMC参加者の16年予想(4.8%)を下回った。しかしながら、労働参加率が2ヵ月連続で低下しており、労働市場からの退出者が2ヵ月連続で40万人超となるなど、必ずしも労働需給がタイトになっていることを示していないことに注意する必要がある。
また、時間当たり賃金(全雇用者ベース)も、前月比が▲0.1%(前月:+0.4%、市場予想:+0.2%)と高い伸びとなった前月の反動が考えられるものの、市場予想を下回り15年12月以来のマイナスとなった。さらに、前年同月比でも+2.5%(前月:+2.8%、市場予想:+2.8%)と、前月、市場予想を下回り、改善が一服した(図表1)。
このようにみると、11月の雇用統計は失業率が大幅に低下したものの、労働参加率や賃金上昇率など、労働需給のタイト化を示す結果とは言えない。もっとも、雇用は堅調な伸びが続いており、全体的には労働市場の改善基調が持続していると判断できる。
12月13~14日にかけてFOMC会合が行われるが、金融政策の結果に影響を与えるような重要指標の発表は予定されていないことから、米実体経済の状況は12月の利上げの障害とならない。また、金融市場も長期金利上昇やドル高など米経済にとって好ましくない状況がみられるものの、株式市場が最高値圏で推移するなど投資家のリスク回避的な動きがみられないことから、12月の追加利上げはほぼ確実だろう。
事業所調査の詳細:製造業の雇用減少は持続
事業所調査のうち、非農業部門雇用増の内訳は、民間サービス部門は前月比+13.9万人(前月:+12.8万人)と前月を上回った(図表2)。
サービス部門の中では、人材派遣業が前月比+1.4万人(前月:+0.7万人)と増加したことから、専門・ビジネスサービスが+6.3万人(前月:+4.8万人)と前月から伸びが加速したほか、医療サービスも+2.8万人(前月:+2.7万人)と加速した。一方、小売業が▲0.8万人(前月:▲0.9万人)、情報サービスも▲1.0万人(前月:▲0.3万人)とこちらは2ヵ月連続で減少した。
財生産部門は、前月比+1.7万人(前月:+0.7万人)と前月から伸びが加速した。建設業が+1.9万人(前月:+1.4万人)と好調を維持した一方、製造業が▲0.4万人(前月:▲0.5万人)と4ヵ月連続で減少した。
政府部門は前月比+2.2万人(前月:+0.7万人)となった。内訳をみると連邦政府が+0.3万人(前月:+0.8万人)と前月から伸びが鈍化する一方、州・地方政府が+1.9万人(前月:▲0.1万人)と前月から増加に転じたことが大きい。
前月(10月)と前々月(9月)の雇用増(改定値)は、前月が+14.2万人(改定前:+16.1万人)と▲1.9万人下方修正された一方、前々月が+20.8万人(改定前:+19.1万人)とこちらは+1.7万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲0.2万人の下方修正となった(図表3)。
なお、BLSの公表に先立って11月30日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増が+21.6万人(前月改定値:+11.9万人、市場予想:+17.0万人)となり、前月、市場予想を上回った。ADP社の結果は10、11月と振れが大きくなっているものの、2ヵ月平均では+16.8万人と概ね雇用統計と同程度の伸びとなっている。
11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が25.89ドル(前月:25.92ドル)となり、前月から▲3セント減少した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から横這いとなった。その結果、週当たり賃金は890.62ドル(前月:891.65ドル)と3ヵ月ぶりに減少した(図表4)。