年金に関する書類やサイトを見ると頻繁に「扶養」という文字が出てくる。一般的に扶養というと子どもや配偶者を養ったり世話をしたりすることを指すが、年金における扶養とはどういった意味を持つのであろうか。年金における扶養の意味、また、扶養となるための条件について解説する。
国民年金に扶養はない?
20歳以上の国民が加入することになる国民年金には、扶養という概念はない。たとえ何ら収入も得ていなくても、被保険者である本人が保険料を支払うことになっているので、扶養したり扶養されたりというケースが生じないのだ。
20歳以上であっても何らかの理由で保険料を支払えないときは、年金事務所等に申請して承認が得られた場合、年金保険料の支払いが一部~全額免除される。
しかし、免除等の承認を受けた期間の保険料の未納分は、猶予を受けた期間の翌年度から起算して2年以内であれば追納加算額なしで、10年以内であればその経過期間に応じた追納加算額をプラスすることで、追納(後払い)することができる。
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厚生年金における扶養の条件とは
扶養となる条件
一方、厚生年金には扶養の概念がある。厚生年金では扶養は満20歳以上60歳未満の配偶者に限定される。満20歳以上60歳未満の配偶者であって、厚生年金に加入しておらず、年間収入が130万円未満の場合は、「
国民年金第3号被保険者
」の資格を備えていることになり、自分自身で国民年金保険料を支払う必要がなくなる。
扶養から外れる条件
ただし、2016年10月以降は、 年間収入106万円以上の配偶者 が次の5つの条件を満たす場合は、自身の年収が130万円未満であっても厚生年金被保険者となり、収入が多いほうの扶養家族にはなれないことになった。
- 従業員数501人以上の企業に勤めている。
- 週に20時間以上勤務している。
- 1年以上勤務することが見込まれている。
- 賃金月額が8万8000円以上である。
- 学生ではない。
結婚の際にやるべきことは
では、具体的に、結婚によって第2号被保険者(厚生年金や共済組合に加入している人)の被扶養者として、第3号被保険者になるためには、どのような手続きをする必要があるのだろうか。
1.被扶養者となる配偶者が国民年金第1号被保険者の場合
国民年金第1号被保険者(厚生年金には加入しておらず、自分自身で国民年金保険料を支払っている人)が被扶養者になる場合は、まず、
- 国民年金の名前と住所の変更手続きをする。
- 配偶者の勤務先の事業主もしくは事務担当者に「国民年金第3号被保険者該当届け」を提出する。
同時に以下の書類が必要となる。
- 国民年金第3号被保険者になる人の年金手帳と配偶者の年金手帳
- 配偶者の収入により生計を維持していることを明らかにできる書類
2.被扶養者となる配偶者が厚生年金被保険者の場合
結婚を機に仕事を辞め、専業主婦・主夫となる場合には、まず、
- 加入している厚生年金の住所と名前を変更する。
- その後、事業主から新しい住所と名前が記された年金手帳を返却してもらい、扶養する配偶者(厚生年金被保険者)の勤務先の事業主もしくは事務担当者に「被扶養者異動届け」を提出する。
同時に以下の書類が必要となる。
- 生計を同一にすることを示す婚姻届
- 退職するほうの配偶者の事業主から返却された年金手帳などの書類
必要とされる書類やフォームが事業所によって異なるので、必ず扶養する側の配偶者の勤務先の事業主もしくは事務担当者に尋ねよう。
扶養になると何が変わるの?
第2号被保険者の被扶養者になると、自分自身の国民年金保険料を支払わなくても、国民年金の保険料を支払ったとみなされるので、国民年金第3号被保険者の期間が25年以上を超えると、老齢基礎年金を受け取ることができる。
また、結婚前に国民年金第1号被保険者であった場合や厚生年金被保険者であった場合は、その期間もプラスして年金受給額が決定される。
一方、配偶者を扶養する側にとって、扶養することで何か変化はあるのだろうか。実際のところ、国民年金の場合は世帯人数によって保険料が変わるが、厚生年金保険料は扶養家族がいても額が増えるわけではない。また、将来受け取る厚生年金額にも影響はない。
老齢厚生年金は老齢基礎年金(国民年金)にプラスされて支払われるものであるので、65歳(基本的には65歳。60歳~70歳の間の好きな時期から受給開始できる)になると今までの収入に応じた年金が支払われることになるのだ。
厚生年金加入の枠拡大は得なのか
2016年10月から、一定条件を満たす場合は、年収106万円以上から厚生年金に加入することになった。厚生労働省では、これまで国民年金第3号被保険者であった人が厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額が増えると述べている。
確かに厚生年金に加入すれば国民年金にプラスした額を受け取れるが、その分、今までは支払う必要がなかった保険料を支払わなくてはならないという金銭的デメリットが発生してしまう。収入によってどちらが得かが変わってくるため、各自、しっかりと保険料について検証することが必要となるだろう。
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