景気の現状判断DI(季節調整値):基調判断を2ヵ月連続で上方修正
12月8日に内閣府から公表された16年11月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は52.5(前月差+3.2ポイント)と5ヵ月連続で改善し、2015年12月以来11ヵ月ぶりに拡大・縮小の節目である50を上回った。
2016年前半の景況感は世界同時株安や英国のEU離脱等の影響で弱含んだものの、その後は海外情勢・資本市場混乱の収束とともに緩やかな回復基調が続いている。なお、内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」と2ヵ月連続で上方修正した。
現状判断DIが前月調査から改善したのは、天候要因が主因とみられる。10月までの高温から一転して全国的に低温となったため、冬物衣料や暖房器具等の季節商材が好調だった模様である。また、米国の大統領選後に円安・株高が進展し、資産効果も追い風となり家計部門のマインドは総じて堅調であった。
一方、天候不順に伴う生鮮食品の価格高騰を懸念する声は依然として根強い。企業部門においては、海外情勢不安や円安・株安局面が収束していることもあり、マインドの改善基調が維持されていることが確認された。大統領選挙の結果は先行き不透明感を高めると予想していたが、円安・株高が進行したこともあり景況感にプラスに働いたようだ。
コメントをみると、引き続き人手不足関連が改善要因となるなか、円安・株高を好感するコメントが前回調査から増加している(最終頁の図参照)。一方、生鮮食品の価格高騰を理由に消費低迷を懸念する声が聞かれている。
気温低下、円安・株高がマインド改善に寄与
現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、雇用関連(前月差▲0.1ポイント)が若干悪化する一方で、家計動向関連(同+3.9ポイント)、企業動向関連(同+2.5ポイント)は前月から改善した。家計動向関連では、小売関連(前月差+4.8ポイント)、飲食関連(同+4.4ポイント)、住宅関連(同6.2ポイント)の改善幅が大きかった。
コメントをみると、 家計動向関連のうち小売関連 では「気温の低下に伴い、冬物の防寒衣料が活発に動き、来客数が伸びている」(南関東・衣料品専門店)など、冬物商材が好調であったことを指摘するコメントが数多く寄せられた。
また、「株価の上昇が良い雰囲気を生んでおり、景況感は良好である」(東海・一般小売店)といったように、小売業を中心に株高の効果を指摘するコメントが寄せられたほか、「ボーナスへの期待から商品の動きが良く、黒物家電やパソコンの動きが特に良い」(中国・家電量販店)とのコメントのように、ボーナス商戦への期待感も景況感を下支えした模様である。
もっとも、「野菜や水産物の価格高騰の影響が出ている」(北海道・商店街)や「客の財布のひもは固く必要最低限なものしか購入せず、割引日やポイントアップの日に購入する傾向がある」(中国・スーパー)など生鮮食品の価格高騰、消費者の生活防衛傾向や節約志向を指摘する声は依然として多く、消費マインドが一時的な要因によって押し上げられた可能性が示唆される。
住宅関連 では、「今月開催した住宅完成見学会への来場者数が、5月開催時に比べ61%増となっている」(沖縄・住宅販売会社)など、住宅購入を目的とした来場者の増加を指摘するコメントが散見された。また、「米国の次期大統領選挙の結果を受けて、円安が進むとともに株価が上がってきたことで、客のムードが非常に良くなってきている」(北海道・住宅販売会社)とのコメントのように、株高による資産効果も追い風となったようだ。
企業動向関連 は、製造業(前月差+2.8ポイント)、非製造業(同+2.2ポイント)ともに前月から改善した。コメントをみると、製造業では「米国大統領選挙以降の円安基調が、輸出企業にとって想定以上のプラス効果となっている」(北陸・一般機械器具製造業)など、円安の進展が景況感改善に大きく寄与した模様である。
非製造業では、「公共工事、民間工事とも工事受注量は好調に推移している。民間建築工事は新たな商材の引き合いもあるなど、引き続き投資意欲の高さが認められる」(北海道・建設業)とのコメントのように、経済対策の効果も追い風となったとみられる。
雇用関連 では、「年末に近づき、販売スタッフの需要が高まっている。顧客からは前年のほぼ2割増しのオーダーがあるなど、企業の拡大意欲がうかがえる」(北海道・人材派遣会社)とのコメントから、年末を控えて人材需要が高まっている様子が窺える。
一方、「引き続き有効求人倍率は好調に推移しているが、特に人出不足が心配される福祉関係の求人が増えている反面、求職者は減少しているため、景気が上向きとは感じられない」など、雇用のミスマッチを懸念する声も寄せられている。