景気の先行き判断DI(季節調整値):改善基調が続くが、一部に不透明感も

先行き判断DI(季節調整値)は53.0(前月差+1.6ポイント)と5ヵ月連続で改善した。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差+1.5ポイント)、企業動向関連(同+1.6ポイント)、雇用関連(同+2.1ポイント)のいずれも前月から改善した。

家計動向関連 では、「ボーナス月であることや、クリスマスや年末年始などイベントが多く、多少は景気回復を期待できる」(北陸・百貨店)などクリスマス商戦や年末商戦へ期待を寄せるコメントが数多く寄せられた。一方、「野菜の価格は相変わらず高く、財布のひもは固いままである」(東海・一般レストラン)といったように、生鮮野菜の価格高騰を懸念する声も大きく聞かれた。

企業動向関連 では、「米国の経済政策に期待感があり、当面は横ばいから緩やかな上昇が見込まれる。輸出企業にとっては、円安基調への期待もある」(東海・電気機械器具製造業)など先行きも円安の下支えが見込まれる一方で、「足元の基調は、米国の次期大統領が正式に就任するまでは続く。

景気は徐々に良くなる傾向にあるが、具体的な政策によっては、景気が乱高下する可能性もある」(近畿・化学工業)といったように、米大統領選挙後の先行き不透明感を指摘するコメントも見受けられた。

雇用関連 では、「人手不足の状況は各業種に広がりをみせ、月間有効求人倍率は3か月連続1.7倍台で推移するなど、今後も求人数は増加する」(北陸・人材派遣会社)とのコメントのように、人手不足を背景に企業の採用意欲が高水準を維持するとみられる。

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先行きは年末年始の需要増への期待から景況感は緩やかな回復が続くことが予想される。もっとも、家計の節約志向は依然として根強く、生鮮食品の高止まりが長期化するようであればマインドへの悪影響は避けられない。また円安や原油価格持ち直しに伴い物価の上昇が見込まれる。消費への影響を注視するためにも、来年に控える2017年春闘の動向には注意が必要である。

足もとの金融市場はトランプ氏の勝利を好感して円安・株高が進行しているが、政策運営を巡り不透明感が高まれば再び円高・株安が進行しマインドに悪影響をもたらす可能性もある。海外の政治情勢や金融市場の動向にも引続き注意が必要となろう。

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岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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