自分は『ずらし役』という感じ
「篠山さんの写真を見ると、ちょっと下世話な感じというか。見世物小屋的な下世話さがあって、しかし技術的なクォリティもある。やっぱり、分厚いんですよね。いろんなひとがいろんな面から見て楽しめるようになっている。それができてしまっているのが凄いなと。
それでそこに自分の写真集を置くと、ちょっと違うのかなって。自分も大衆性があるつもりでつくっていますけど、そういう篠山さん的な下世話な本になれていなくて。その辺が弱いのかなって思います」
とはいえ、藤代氏は以前からずいぶん篠山氏に「親しくさせていただいている」という。一時期は年末になると、よく一緒にお酒を飲んだりもしたのだそう。それはふたりのあいだに共通点が多いからではないだろうか。
「篠山さんって凄くサービス精神がある方。ひとが見たがっているものをちゃんと見せてあげる、というところでの力が強い。しかもそれが迎合ではなくて、自分でそう向かうところが篠山さんの本心であるような気がするんです。
そして自分も基本はそういうところがあって、時代が見たいものを見せたいと思うんです。初期の広末涼子の写真集とかは『実は皆こういうのを見たいのでは』ということで写真集をつくっていました。
でも、そんなふうにアイドルを撮っても、自分は『ずらし役』という感じ。篠山さんはグラビア写真の幹のようなものをつくった先駆者で、その幹から派生したいろんなフォロワーたちがいて、そのフォロワーたちのつくったものを今度は自分が間接的にずらしていっている。そしてそうやってずらすと位置関係が合ってしまう。というところでの共感のようなものを感じていただけているのじゃないでしょうか」
だからなのだろうか。藤代氏は篠山氏に褒められることも多いそう。