結果の概要:個人所得、消費支出ともに前月から改善
1月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.1%)となり、前月から伸びが加速したものの、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%には届かなかった。
一方、個人消費支出(名目値)は、前月比+0.5%(前月:+0.2%)と、前月から伸びが加速、こちらは市場予想(+0.5%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.2%)と、+0.1%から上方修正された前月改定値から伸びが加速、市場予想(+0.3%)に一致した(図表5)。貯蓄率(1)は5.4%(前月:5.6%)と前月から低下した。
価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月改定値:+0.1%)と前月を上回り、市場予想(+0.2%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:横這い)とこちらも前月を上回り、市場予想(+0.1%)に一致した(図表6)。なお、前年同月比では、総合指数が+1.6%(前月:+1.4%)、コア指数が+1.7%(前月改定値:+1.7%)となり、総合指数は5ヶ月連続で伸びが加速した一方、コア指数は前月に一致した(図表7)。
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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:個人消費は所得を上回る伸び。選挙後のセンチメント改善を反映
12月は、名目個人所得、個人消費支出ともに前月から伸びが加速したものの、消費が所得の伸びを上回った(図表1)。この結果、貯蓄率は15年3月(5.3%)以来の水準に低下した。
大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、同氏の減税などの経済政策への期待から、株式市場が大幅に上昇したこともあり、消費者センチメントは、ミシガン大学信頼感指数が04年1月以来、コンファレンスボード信頼感指数が01年8月以来の水準となるなど回復が顕著となった。
12月の消費が所得対比で強かった理由は消費者センチメントの改善が要因と思われる。既に発表されている1月のミシガン大学の指数は一段の改善を示していることから、堅調な消費者センチメントは引き続き消費の追い風となろう。
物価(前年同月比)は、コア指数が安定する一方、エネルギー価格の持ち直しもあり総合指数が7月以降、5ヵ月連続で上昇しており、物価上昇圧力には緩やかながら高まりがみられる。もっとも、総合指数、コア指数ともにFRBの物価目標(2%)を下回る状況が持続している。
所得動向:賃金・給与は堅調、利息・配当収入の伸びは鈍化
個人所得の内訳をみると、賃金・給与が前月比+0.4%(前月:▲0.1%)と前月のマイナスからプラスに転じ底堅い伸びとなった。雇用増加が持続する中、労働需給はタイト化しており雇用増加が賃金上昇に繋がり易くなっていることから、今後も賃金・給与の堅調な伸びが持続しよう。一方、利息・配当収入は+0.0%(前月:+0.2%)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。
個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、名目値が+0.3%(前月:+0.1%)、価格変動の影響を除いた実質ベースが前月比+0.1%(前月:横這い)と、いずれも前月から伸びが加速した(図表3)。
消費動向:好調な自動車販売を背景に耐久財消費が加速
名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.6%(前月:▲0.2)と前月のマイナスからプラスに転じたほか、サービス消費も+0.4%(前月:0.4%)と好調を維持した(図表4)。
財消費では、耐久財が+1.4%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じた。これは、自動車・自動車部品が+2.8%(前月:▲3.0%)と前月から回復したことが大きい。一方、非耐久財も+0.2%(前月:0.1%)と小幅ながら前月から伸びが加速した。食料・飲料が▲0.4%(前月:+0.0%)と前月からマイナスに転じたものの、ガソリン・エネルギー関連が+2.7%(前月:+1.2%)と前月から伸びが加速したことなどが貢献した。
サービス消費は、外食・宿泊が▲0.9%(前月:+1.2%)と前月からマイナスに転じたものの、住宅・公共料金が+1.5%(前月:+0.2%)と前月から大幅に伸びが加速した。
価格指数:食料品価格の下落が持続
価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.7%(前月:+1.2%)と4ヵ月連続でプラスとなるなど、上昇基調が持続した(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:▲0.2%)と、こちらは8ヵ月連続でマイナスとなっており、食料品価格の下落傾向には歯止めがかかっていない。
前年同月比では、エネルギー価格指数が+5.7%(前月:+0.5%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、前月から伸びが大幅に加速した(図表7)。一方、食料品価格指数は、▲1.6%(前月:▲1.7%)と、こちらも8ヵ月連続のマイナスとなった。
原油価格は、16年2月に30ドル割れの底値をつけていることから、2月のエネルギー価格は前年同月比でさらに加速するとみられるものの、原油価格が足元の50ドル台前半で推移すれば物価上昇圧力も限定的となろう。
窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
主任研究員
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