東京株式市場が波乱の展開になっています。日経平均株価は4/6(木)には3/13(月)に付けた昨年来高値から1千円を超える水準まで下落しました。トランプ米大統領の経済政策に対する過度の期待が後退し、米国株高が一巡し、米金利低下、円高・ドル安が進んできたことが背景とみられます。さらに北朝鮮やシリアに絡む地政学的なリスクも台頭しているようです。

こうした中、我が国では4月下旬以降、3月決算企業の決算発表が始まる運びとなっています。株式市場全般の波乱で、好業績銘柄の多くも株価が下落または低迷し、投資チャンスを迎えている可能性がありそうです。そこで今回の「日本株投資戦略」では、3月決算企業の決算発表を控え、会社予想を上回る利益が期待され、場合によっては業績予想の上方修正も期待できるような「好業績銘柄」を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

間もなく決算発表シーズン!投資家としての注意点は?

3月決算企業の決算発表シーズンが近づいています。4/20(木)前後から一部企業の発表がスタートし、4/28(金)に発表社数ベースで前半のヤマ場を迎える見込みです。5/9(火)から5/12(金)までは連日で数百社が、特に5/12は1千社以上が決算発表を実施する予定になっています。

このように多くの企業が短期間に集中的に決算発表を実施するので、投資家が決算発表の内容を、その質的な面までも含めて、しっかりと理解するのは困難です。このため、決算発表後の株価は、発表された数字がポジティブなのか、ネガティブなのか、瞬間的に判断して動くことになります。特に利益が会社計画を上回ったのか、アナリスト予想を上回ったのか、会社発表の業績予想がアナリスト予想を上回ったのか等が重要な判断材料になります。

足元では、アナリストの決算発表直前の取材規制が厳しくなっており、3月決算企業の場合は、3月中旬頃から、アナリストと会社の接触が例年に比べて減っていると推測されます。発表された業績数字がサプライズを伴うものになる可能性は、投資家のみならず、アナリストにとっても高くなったと考えられ、決算発表を契機とする株価変動リスクは大きくなったとみられます。株価変動リスクに対応する投資家の対応策は「株式を保有しないこと」かもしれません。中長期保有を前提としている銘柄でなければ、決算発表前に買いポジションを軽くすることも妥当な投資戦略であると考えられます。

しかし、逆に考えれば、決算発表で好業績が明らかになった銘柄は、大きく上昇する可能性もあります。今回の「日本株投資戦略」では、3月決算銘柄を対象に、会社予想を上回る利益が期待され、場合によっては業績予想の上方修正も期待できるような「好業績銘柄」を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

業績予想の上方修正も期待できる「好業績銘柄」はコレ!?

それでは銘柄の抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)時価総額1千億円超の東証上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄であること
(3)銀行、保険、証券・商品先物取引、電力・ガス以外の業種であること
(4)業績予想を行っているアナリストが2社以上いる会社であること
(5)第3四半期までの累計(2016年4~12月期)営業利益が前年同期比で増益であること
(6)第4四半期の営業利益が前年同期と同額と仮定した時、2017年3月期の営業利益が会社予想を上回る計算になること
(7)2017年3月期の予想営業利益について、市場予想(コンセンサス)が会社予想を上回っていること
(8)2017年3月期の予想純利益(市場コンセンサス)が過去4週間で上昇していること
(9)2018年3月期の営業利益(市場予想)が10%超の増益見通しであること
(10)第3四半期決算発表シーズン終了直後の2/15(水)から4/6(木)までの株価パフォーマンスが日経平均株価のパフォーマンス(-4.5%)より悪いこと

上記の全条件を満たす銘柄を(6)の数字、すなわち17/3期の予想営業利益について、市場予想が会社予想を何%上回っているのか、その数字が大きい順に並べたものが表1になります。

このスクリーニングのポイントは第3四半期までの業績を勘案して、通期の会社予想業績が保守的なのか、楽観的なのか、その判断材料にしていることです。第3四半期まで営業増益となっている銘柄(条件5)が、第4四半期で前年同期比「横ばい」に減速するという保守的な前提条件(条件6)を置いても、会社予想営業利益が達成できる計算になっている銘柄は、2017年3月期の会社予想を上回る営業利益が期待され、場合によっては業績予想の上方修正も期待できるような「好業績銘柄」であると考えました。そうした銘柄にさらに条件7および条件8を加えることで、予想の確度を高めようとしています。

なお条件9も満たしていることで、市場が中期的にも好業績を期待している銘柄であると考えられます。また条件10を満たしていることで、好業績が株価に織り込まれている可能性がその分低くなっていると考えられます。

表1

抽出された「好業績銘柄」の投資ポイント

表1に掲載した銘柄のうち、上位5銘柄の投資ポイントをご紹介します。

図1:日本新薬(4516)・日足
図1:日本新薬(4516)・日足

日本新薬 <4516> は血液内科、泌尿器科、希少疾病・難病の領域に注力する医薬品メーカーです。中期的に肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療剤である「ウプトラビ」の売上拡大が期待できそうです。第3四半期までの累計営業利益は174億円(前年同期比153%増)で、2017年3月期・通期の会社予想営業利益135億円(前期比57.9%増)をすでに上回っています。2018年3月期も21%の営業増益を市場は期待しています。株価は3月に入り下落基調でしたが、5,600円台で下げ渋る様相を呈しています。

図2:大同特殊鋼(5471)・日足
図2:大同特殊鋼(5471)・日足

大同特殊鋼 <5471> は、自動車用燃料規制の強化に対応し、高付加価値素材への需要がどこまで高まるかが成長の鍵を握ると考えられています。第3四半期までの累計営業利益は176億円(前年同期比0.2%増)で、2017年3月期・通期の会社予想営業利益210億円(前期比14.0%減)というのは保守的なイメージです。チャート的には、1/26(木)高値と2/2(木)安値の間に大きな窓が開いており、3/23(木)にかけての下落でそれをいったん埋めた形になっています。

図3:ディー・エヌ・エー(2432)・日足 ※図1~図3は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

ディー・エヌ・エー <2432> はキュレーション問題でイメージ的にも、株価的にもダメージを受けた形となりました。図3で示されたように、11月以降の株価下落率は一時4割近くに達しています。こうした中、2/8(水)に発表された第3四半期の累計営業利益は186億円(前年同期比27%増)でした。通期の予想営業利益は209億円(前期比5.5%増)で、任天堂関連を慎重に見た保守的な業績予想のように見受けられます。株価的には2,200円台で底値が固まれば、業績的には見直しが入っても不思議ではないとみられます。

デンソー <6902> は自動車部品の首位メーカーでカーエアコンの国内シェアは50%強に達しています。国内外の自動車関連企業がしのぎを削る自動運転分野では「走行環境認識」を中心に、開発の中核を担っていくと期待されます。第3四半期までの累計営業利益は2,475億円(前年同期比1.8%増)で、2017年3月期・通期の会社予想営業利益2,980億円(前期比5.6%減)というのは保守的なイメージで、市場では3,100億円台の営業利益を予想しています。株価的にはトランプ政権の通商政策への懸念や、米自動車販売に対する不透明感を背景に自動車セクター全般に逆風が吹いているようですが、中期的な成長余地の大きさが注目されそうです。

住友電気工業 <5802> も営業利益の6割程度が自動車関連であり、株価も自動車セクターと連動しやすい面があるようです。ただ、光ケーブルが2000年初頭以来の需要拡大期を迎えている上、環境・エネルギー分野も今後は利益成長に寄与すると期待されます。株価評価に自動車以外の分野の成長期待がより反映されるようになる可能性に注目したい所です。第3四半期までの累計営業利益は996億円(前年同期比3.8%増)で、2017年3月期・通期の会社予想営業利益1,350億円(前期比5.9%減)というのは保守的なイメージです。市場では2018年3月期に20%超の営業増益を期待しています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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