ヤマトホールディングスがアマゾンの当日配送業務を持続できなくなり、宅配便の総量抑制や値上げを検討し始めたことが報じられたことは記憶に新しいと思われます。また、4/18(火)の日本経済新聞では、コンビニ大手5社が全店に自動レジを導入する計画であることが伝えられています。

これらのニュースの背景にあるのが「人手不足」問題です。そのことが株式市場でも改めて注目され、その克服に貢献できると考えられる銘柄への物色が始まっているように見受けられます。今回の「日本株投資戦略」では、「人手不足関連銘柄」を幅広くご紹介するとともに、業績面も加味した銘柄を「日本株投資戦略」特選の「人手不足関連銘柄」としてご紹介することにします。

「人手不足」は深刻になる一方?

我が国の人手不足問題がここにきて改めて、深刻な問題として捉えられ始めています。特に、ヤマトホールディングスがアマゾンの当日配送業務を持続できなくなり、宅配便の総量抑制や値上げを検討し始めたことは象徴的な問題として、多くのメディアに取り上げられています。

人手不足問題の背景にあるのが、我が国の少子高齢化であり、生産年齢人口の減少であることは間違いない所であると考えられます。4/14(金)に総務省が発表した人口推計(2016年10月1日現在)によると、我が国の総人口は1億2,693万人で、前年から16万2千人減少しました。日本の総人口は2008年以来減少に転じています。そして労働の担い手となる「生産年齢人口」は7,656万人で、過去20年間で約1千万人も減少(図1)しています。

有効求人数を有効求職者数で割った「有効求人倍率」は現在1.43倍で、平成バブル以来の高さです(図2)。好景気を示す数字であり、アベノミクスの効果を示していると考えることができますが、人手不足で働き手が少なくなったという側面もあり、素直に喜べないと考えられます。今後、生産年齢人口の減少は2030年に6,700万人程度まで減少する見込みで、人手不足問題はいっそう深刻になる可能性があります。

図1 図2

人手不足関連銘柄とは?

「人手不足関連銘柄」として一般的に考えられるのは、人材紹介や派遣、アウトソーシングの受託などを業務としている企業です。国の「働き方改革」からの要請もあり、既存の従業員の労働時間を短縮する一方、人手不足の中で企業が一定の業務量を確保しようと思えば、労働力を柔軟に確保する必要性が大きいと考えられるためです。

表1はおもに「人材派遣・請負」等を、表2は「求人情報・人材紹介」をそれぞれ主業務とする企業です。SBI証券の株式検索ウィンドウは単に、コード番号や銘柄名を入力して銘柄を検索することができるだけでなく、業種や投資テーマによっても検索できるのが特徴です。

エスプール <2471> はEC事業者の注文事務や物流業務等を請け負ったり、コールセンター向けに人材を派遣したりする業務が中心です。ヤマトホールディングスの問題で物流分野の人手不足にスポットが当たったこともあり、当社株は過去1ヵ月間で大きく上昇しています。学情 <2301> は企業合同説明会に強みを持つ企業です。企業にとって「もうひとりの採用担当者」としてのポジションになることを志向し、採用活動をフルサポートする体制を整えています。

表1 表2

小売・外食分野の人手不足も深刻であるとみられます。厚生労働省の「労働経済動向調査」(2016年11月)において、パートタイム労働者の過不足を判断するDI(不足-過剰)は、「宿泊業・飲食サービス業」が第1位(64%)で、「卸売業・小売業」が第3位(47%)と不足感が強くなっています。こうした中、大手コンビニ5社では2025年までに国内全店舗(5万店)を対象に自動レジを導入する方針であることが4/18(火)の日本経済新聞で報じられています。

自動レジでは、パッケージ等に埋め込まれた暑さ1ミリ以下の「ICタグ」を機械で読み取ることにより、袋やかごに商品を入れたままの状態で会計することができます。レジの人手を削減できることはもちろん、販売状況が瞬時にメーカーや物流業者に反映されるため、広範囲の業種で労働の効率化を図ることが可能になります。1台100万~200万円のレジが全国5万店に導入されることで500~1,000億円の投資が発生しそうですが、スーパー等にも広がれば波及効果はより大きくなりそうです。

表3はICタグに関連しているとみられる銘柄です。SBI証券Webサイトの株式検索ウィンドウに「ICタグ」または「ICタグ・カード」、「ICカード・バーコード関連機器」と入力した時に出力される銘柄が掲載されています。カーディナル <7855> などは株価が大きく上昇してきましたが、4/21(金)には大きく下落するなど、値動きが大きくなっています。

表4はその他の人手不足に関連すると考えられる銘柄です。エスケーエレクトロニクス <6677> は自動レジ向けのシステムを提供しています。ホシザキ <6465> は業務用厨房機器のトップ企業であり、コンビニ向けなどに自動皿洗い機などが普及すると恩恵を受けそうです。極東開発工業 <7226> はパワーゲートなど、荷役の省力化をもたらす装置を生産しています。また、食品製造機械のレオン自動機 <6272> はコンビニ向け半製品を製造する食品工場等に機械を納入しています。

表3 表4

「日本株投資戦略」特選の「人手不足関連銘柄」はコレ!?

これまで人手不足に関連するとみられる銘柄をご紹介してきましたが、銘柄数が多いうえ、個々に投資タイミングを図る必要もあり、投資判断を下すのはなかなか大変であるとみられます。さらに、3月決算銘柄の決算発表を控えているというタイミングでもあり、個別銘柄の業績動向には注意が必要であると考えられます。

表5はこれまでご紹介してきた人手不足関連銘柄(表1~表4)について、次の条件を満たす銘柄に絞ったものです。

(1)3月決算銘柄であること
(2)第3四半期までの累計営業利益の増益率が17/3期会社予想営業増益率を上回っていること

例えば表5のテンプホールディングスの場合、第3四半期までの累計(9ヵ月)営業利益は前年同期比21.0%です。通期予想では15.9%増益ですので、会社予想を上回るペースで業績が推移していると考えられ、好決算が期待できると考えられます。表5の銘柄はもともと人手不足というテーマに沿った銘柄と考えられますので、さらに業績面での好材料が加われば、高い投資パフォーマンスを狙うことが可能になると考えられます。

表5

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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