女性首相というと「Iron Lady(鉄の女)」との異名をとった英国のサッチャー首相が真っ先に思い浮かぶが、歴史上、女性首相・大統領は何カ国・地域で何人誕生しているかご存じだろうか?(答えは最後)

すでに英国やノルウェー、フィリピン、スリランカといった国では複数の女性首相・大統領が誕生しており、その数は2000年を境に急増している。日本でもいつか女性首相が誕生する日が訪れるのだろうか。

サッチャー首相より人気のメイ首相?6割の国民が支持

世界初の女性首相は英国領から独立後のセイロンで誕生した。バンダラナイケ首相は1960年から1965年にかけてセイロンで、1970年から1977年、1994年から2000年にはスリランカ(セイロンは1972年、スリランカ共和国に改称。首相制から大統領制に移行した)で、合計3度も首相と大統領を務めた。

また長女のチャンドリカ・クマーラトゥンガ大統領も、1994年から2005年にかけてスリランカ第5代大統領を務めあげた。

Brexitが世界を揺るがした2016年、衝撃の政権交代とともにふたり目の英国女性首相として頭角を現したのはメイ首相だ。なにかとサッチャー首相と比較されることが多い反面、EU離脱交渉や政策面でも「首尾一貫性に欠けている」との批判も多数挙がっている。

しかし6月の総選挙をひかえ支持率は61%と、1983年にサッチャー首相が記録した48%(IpsosMori調査)を大幅に上回っている。

アジア圏でも女性首相・大統領は続々と生まれている。わずか2週間足らずとはいえ中華民国の名誉主席を務めた宋慶齢 主席(1981年)、インドネシアのメガワティ・スティアワティ・スカルノプトゥリ大統領(01年-04年)、韓国の朴槿恵(13年-17年)、台湾の蔡英文総統 (16年-)など。フィリピンではアキノ大統領(86年-92年)、アロヨ大統領(01年-10年)と、ふたりの大統領が誕生した。

男女格差の縮小、環境保護などに取り組み女性首相・大統領

女性で初めて国民によって選ばれた女性大統領は、アイスランドのフィンボガドゥティル大統領だ。1980年から16年にわたり、欧州初の女性大統領として就任。月日とともに人気が高騰し、初回就任時には33.6%だった獲得票が第2期の1984年には94.6%に達した。

女性でありながら同性の権利の保護には消極的だったサッチャー首相と異なり、フィンボガドゥティル大統領は「男女均等法」に初めて本格的に取り組んだ大統領としても有名だ。

医師から一国の首相に転身を遂げたノルウェーのブルントラント首相(任期1989年、1986年-89年、90年-6年)も、男女格差対策の一環として閣僚18人中半分を女性で構成したほか、環境問題にも積極的に取り組む姿が「サステナビリティの母」と称えられた。ノルウェーではソルベルグ首相が、現在ふたり目の女性大統領として活躍中だ。

インド初の女性大統領となったパティル大統領(07年- 12年)だが、お飾り要素が強く、実質上「権力をもたない大統領」と見なされていた。

世界の現役女性首相・大統領16人と就任年(蔡英文総統以外、ピュー研究所調査)

テリーザ・メイ首相(英)2016年
アンゲラ・メルケル(独)2005年
エルナ・ソルベルグ首相(ノルウェー)2013年
ドリス・ロイトハルト大統領(スイス)2017年
ベアタ・シドゥウォ首相(ポーランド)2015年
コリンダ・グラバル・キタロヴィッチ大統領(クロアチア)2015年
ケルスティ・カリユライド大統領(エストニア)2016年
ダリア・グリバウスカイテ大統領(リトアニア)2007年
エレン・ジョンソン・サーリーフ大統領(リベリア)2006年
マリールイーズ・コレイロ・プレカ大統領(マルタ)2014年
ヒルダ・ハイネ(マーシャル諸島)2016年
アミーナ・グリブ・ファキム大統領(モーリシャス)2015年
ビドヤ・デビ・バンダリ大統領(ネパール)2015年
蔡英文総統(台湾)2016年
シリマヴォ・バシェイク・ハシナ首相(バングラデシュ)1996年から合計2期
ミシェル・バチェレ大統領(チリ)2014年

答え 世界70カ国・地域、合計81人
(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)