ヘッジファンドはパフォーマンスの良さや金融市場でのプレゼンスの高さからマスコミ等に頻出している。
レイ・ダリオ、ジョージ・ソロスといったGURUと言われるカリスマファンドマネージャーが運用するファンドも多い。運用総資産は世界で300兆円を超えており、レバレッジを効かせていることからそれ以上のインパクトを世界市場に及ぼしている。
年間リターンが20%を超えるような神ファンドも存在しているが、基本的には富裕者層向けであり実態は解りにくい。個人でも投資可能なヘッジファンドを紹介しよう。
ヘッジファンドの仕組みは私募、絶対収益
ヘッジファンドの仕組みは、投資信託と似ている。複数の出資者の資金まとめて運用するファンド形態だ。投資信託と大きな違いは主に2点。私募であることと、絶対収益を狙うことだ。
通常の投信が誰でも買い付けが可能な公募ファンドなのに対し、ヘッジファンドはハイリスクハイリターンであるため、一定額以上程度の資産を保有し投資経験も豊かな大口投資家のみを対象とする私募ファンドだ。ファンドの出資者は通常50人未満。対象が大口の適格投資家に絞られているため、投資信託と比べてポートフォリオやパフォーマンスの開示もオープンでない。どういう投資で好パフォーマンスを上げているのか見えにくいファンドも多いのが実情だ。
絶対収益とは投資環境にかかわらず、どんなときでも収益を上げることをターゲットとするファンドだ。たとえば「日本株投信」なら、ベンチマークである日経平均などを上回るリターンを上げることを目指す相対収益がターゲットだ。絶対収益を目指すためには、市場の下げにも対応できなくてはならない。
現物株、現物債券だけでなく、空売り、先物やオプションといったデリバティブを駆使し、レバレッジを掛けた運用をしている。株式や債券と言った伝統的な金融資産とリターン相関度が低いため、オルタナティブ(代替)投資として分散投資にも適している。富裕者層だけでなく長期運用の年金資金など世界的な機関投資家も積極的に資金を投じている。
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ヘッジファンド投資はかなりハードルが高い
ヘッジファンドの投資単位は最低でも1000万円以上。億単位でないと買い付け出来ないファンドもある。GURUが運用していてパフォーマンスの良い人気ファンドは募集がクローズされていて、何年も待たないと購入できないファンドも存在する。
ヘッジファンドは富裕者層向けであるために、ファンド籍をバミューダなどのタックスヘイブンに置いていることが多い。タックスヘイブンとは、キャピタルゲインやインカムゲインに無税か低税率の国である。したがって直接ヘッジファンドを購入するには語学の壁もある。
解約するには通常45日前に通告しなくてはならないというルールもあり、即時の換金性はない。
運用成績の期待値が高いため、運用報酬も高い。通常年間2%で、さらに成功報酬としてキャピタルゲインの20%を払うのが慣例だ。平均的なアクティブ投信の年間運用報酬が1.5%程度、インデックス投信では1%以下、ETFだと0.5%以下であり、ヘッジファンドのコストの高さは際立っている。
ヘッジファンドに投資する方法
もしあなたが富裕者層であるならば、ウェブサイトなどから直接大手ヘッジファンドにコンタクトし買い付けることも可能だ。海外の証券会社や銀行に口座を開設し、その口座経由で投資することも不可能ではない。
ただ、一般の個人投資家が国内でヘッジファンドを買い付けるには、ヘッジファンドと同様のスキームで運用している国内投信を買う方法と一任勘定で海外ファンドを組み入れる方法とがある。
ヘッジファンドは金融庁の登録要件から外れており、日本国内でそのままの形で証券会社等が販売することはできない。国内の運用機関がヘッジファンドと同じスキームで運用した投資信託を買うか、ファンド・オブ・ファンズのような運用助言会社が有名ヘッジファンドをトラックし、同じようなパフォーマンスが出るように設定したミラーファンドに投資することになる。個人がヘッジファンドを買うにはこの方法が一番容易だろう。
国内口座から海外ヘッジファンドに投資したければ、外資系など個人富裕層向けのプライベートバンクの投資一任勘定か、証券会社や銀行のラップ口座、ファンド・オブ・ファンズなど投資助言会社の口座を開設することで買い付ける方法もある。もっとも、プライベートバンクの口座は通常数千万円以上の資産がないと開設できない。ラップ口座は比較的少額でも作れるようになったが、それでも最低500万円は必要で決してハードルは低くない。
ヘッジファンドの国内投信
買い付けやすいヘッジファンドとして、国内運用会社がヘッジファンドと同じスキームで運用する投信を戦略別にいくつか紹介しよう。ファンドに投資するに当たっては、ホームページや目論見書などを参考にしてしっかり理解を深めてから投資したい。 (純資産は4月末時点)
【グローバルマクロ】
1. 三菱UFJ国際投信/マクロ・トータル・リターン・ファンド/設定16年6月/純資産460億円
JPモルガン運用のグローバルマクロ戦略のヘッジファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ。
【CTA、トレンドフォロー】
2. T&D投信/ロボット戦略/世界分散ファンド/16年9月/182億円/
CTA(商品投資顧問)、トレンドフォロー戦略の大手英マンのファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ。
【ロングショート】
3. ブラックロック/世界株式絶対収益追求ファンド/14年7月/36億円
日本株を含む世界株のロングショート戦略であるブラックロックのファンド2本に投資するファンド・オブ・ファンズ。
4. 野村アセット/ワールドスターオープン/95年1月/42億円
グローバル株式のロングショート戦略。MSCIワールドインデックスをベンチマークにはしているが、先物・オプションなどのデリバティブとスワップ取引を活用して効率化。年間リターン17.14%。
【新興市場】
5. 日興アセット/日興・アッシュモア・グローイング・マルチストラテジーファンド/07年4月/47億円
マルチストラテジーの英アッシュモアが運用。新興国市場の債券、株式、通貨が投資対象。プライベート・エクイティなどに投資するスペシャル・シチュエーション戦略等を活用する絶対収益型のファンド・オブ・ファンズ。年間リターン10.23%。
【マルチストラテジー】
6. BNYメロン・アセット/BNYメロン・リアル・リターン/13年3月/230億円
世界の株式、債券、通貨等を投資対象とし、米ドルベースで絶対収益を目指す。BNYメロングループのニュートン・インベストメントのファンドにが親ファンド。3年リターン3.81%。
【日本株】
7. アセットマネジメントOne/AR国内バリュー株式ファンド/11年11月/41億円
日本株の中小型バリュー株式を主要対象。株価指数先物取引を組み合わせた運用により絶対収益の獲得をめざす。年間リターン7.67%。
8. スパークス/日本株ロング&ショート/03年2月/8億円
日本株ロングショート戦略。日本株のヘッジファンドの草分け。リサーチにより割安株を買い、割高株を空売りする戦略。5年リターン8.11%。
9. 大和住銀投信投資顧問/ ジャパン・スペシャルニュートラル/02年1月/16億円
日本株の絶対収益追求型。ボトムアップリサーチで個別銘柄に投資し、先物で戦略的にヘッジをかけ絶対収益を狙う。設定来リターン26.62%。(ZUU online 編集部)
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