デロイトの調査によると、2016年の時点でロボットアドバイザーを提供している企業数は世界15カ国・地域で100に近かった。ロボアドが運用する資産総額は2020年までに2.2兆〜3.7兆ドル、2025年までに16兆ドルを超えると予想されている。

元野村ホールディングスのシニアウェブ開発者ラリー・ルートヴィヒ氏が立ち上げた投資情報サイト「インベスター・ジャンキー(Investor Junkie) 」に掲載されたランキングから、急成長のロボアド市場をリードするロボアドを紹介しよう。ランキングは「手数料」「投資オプション」「資産配分」「カスタマーサービス」「運用・管理ツールの使いやすさ」など6項目を基準に評価したもの。

ウェルスフロント、ベターメントなどロボアド産業のトップから、「学生ローン借り換え」スタートアップSoFi のウェルス・マネージメント、女性専用エルヴェストまで、豊かな顔ぶれだ。

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(画像=ウェルスフロントWebサイトより)

15位 エルヴェスト ——女性投資家による女性のためのロボアド

「女性に投資の楽しさを広め、男女格差縮小に貢献する」というコンセプトから生まれたエルヴェスト(Ellevest)。元ウォール街の女性エクゼクティブ、サリー・クロウチェック氏が2014年、ニューヨークで立ち上げた「女性による女性のためのロボアド」だ。

最低投資額が設けられていないため投資初心者でも気軽に試せるが、運用管理手数料は0.50%と一部のロボアドよりも高め。スコアは10ポイント中7.0。

14位 TDアメリトレード・エッセンシャル・ポートフォリオズ——投資スタイルに合わせれリスク・リターンレベルを選べる

TDアメリトレード(Ameritrade)は子会社を通し、証券ブローカー・サービスやロボアド「TDアメリトレード・エッセンシャル・ポートフォリオズ(TD Ameritrade Essential Portfolios」を提供している。「オマハの賢人」の異名をもつ国際的著名投資家ウォーレン・バフェット氏が、長年拠点としているオマハで1994年に設立された。

ロボアドではモーニングスター・インベストメント・マネージメントも推奨するETFでポートフォリオを構成。5つの選択肢の中から、自分の投資スタイルに合ったリスクおよびリターンレベルが選べる。最低運用額は5000ドル。年間運用手数料は0.3%。スコア7.0。

13位 フィーチャー・アドバイザー(米国)——大学費用積立プランにも対応

フィーチャー・アドバイザー(FutureAdvisor)は2010年、元Microsoftの技術者やプログラムマネージャーがニューヨークで立ち上げた投資アドバイザリー企業だ。2015年8月、ブラックロックに1.5億ドルで買収されている。

年金プランのほか大学費用のための積み立て「529貯蓄プラン」にも対応しているため、子どもの将来のために投資を検討している親には心強い味方となりそうだ。しかしアドバイスは無料だが最低投資額が1万ドル、年間運用手数料が0.50%と、ある程度経済的に余裕のある層をターゲットにしている。

12位 Eトレード・アダプティブ・ポートフォリオ(米国)——ミューチュアルファンドを組み込んだ「ハイブリッドETF」も

1982年ニューヨークで設立されたオンライン・ブローカー、Eトレード(ETRADE)ファイナンシャル・コーポレーションのロボアド事業、Eトレード・アダプティブ・ポートフォリオ(ETRADE Adaptive Portfolio)。

ETFとミューチュアルファンドを組み合わせた「ハイブリッド・ポートフォリオ」と、100%ETFで構成された「ETFポートフォリオ」の2つから、好みに合わせて選べる。

最低運用額は5000ドル。年間運用手数料は0.30%。特に既存のE*TRADE顧客にとっては、利用しやすいサービスだろう。

11位 フィデリティ・ゴー(米国)——iシェアーズなど手堅いポートフォリオ

大手フィデリティ・インベストメンツが運営するロボアド、フィデリティ・ゴー(Fidelity Go)。保守的投資スタイルで知られるフィデリティだけに、ロボアド領域でも堅実さがにじみ出ている。

選択する口座の種類によってポートフォリオを構成するETFに差がでるが、課税タイプならばブラックロックの iシェアーズ・コア S&P 500 ETFやフィデリティ・グローバルex U.Sインデックスなど。

最低投資額は5000ドル。退職投資口座の年間手数料は0.35%、課税投資口座は0.35〜0.40%。スコアは7.5。

10位 ヘッジャブル(米国)——1ドルから利用できるロボアド版ヘッジファンド

ヘッジャブル(Hedgeable)は2009年ニューヨークで設立された。ミレニアル世代をターゲットに、「世界最大級のヘッジファンドの投資テクニック」を活用したロボアドを提供している。

投資対象分野は不動産からコモディティー、新興市場、ビットコインまで幅広く、たった1ドル投資するだけで、本来は最も裕福な投資家の特権になりがちだった資産クラスにもアクセスできる。まさにロボアド版ヘッジファンドだ。

平均的なヘッジファンドの手数料は4.87%と割高だが、ヘッジアブルならば0.3〜0.75%。運用・管理ツールも比較的使いやすい。スコアは7.5。

9位 ウェルスシンプル(カナダ)——低コストインデックスで手堅く攻める

手堅い投資を好むならウェルスシンプル(Wealthsimple)がお誂え向きだ。低コストのインデックスファンドをベースにポートフォリオが構成されるため、「通常の投資信託より手数料が安く、貯蓄口座に預けているより利益がでる」といった、守りと攻めのバランスが絶妙な投資を体験できる。人間のアドバイザーが随時相談を受けつけている点も安心感を与える。

運用額の下限はなく5000ドル以下は手数料無料。しかし5000〜1万ドルは年間0.50%、それ以上は0.40%と、ほかのロボアドよりもかなり高めの設定が難点だ。カナダのトロントで2014年に設立された。スコアは8.0。

8位 ブルーム ——確定拠出型年金「401kプラン」専用ロボアド

カンザス州リーウッドで2013年に設立されたブルーム(Blooom )。米国の確定拠出型年金(加入者自身が資産を運用する年金制度)「401kプラン」で、加入者がより簡単に、効率的に資産運用できる環境を提供している。

「確定拠出年金に興味があるが難しくてよくわからない」といった投資初心者でも、専門家のアドバイスを受けながら、オンラインで楽々資産運用ができる。月額10ドルで10万ドル相当の401kプランが運用・管理可能だ。

401kと403kプランのみ対応とかなりサービス範囲が限定されているにも関わらず、現在の資産運用総額は9.5億ドルに達している。スコアは8.0。

7位 バンガード・パーソナル・アドバイザー・サービシズ (米国)——世界最大のミューチュアル・ファンドマネージャーのロボアド

大手ロボアドの代表格バンガード・パーソナル・アドバイザー・サービシズ(Vanguard Personal Advisor Services)。運用資産4.8兆ドルという世界最大のミューチュアル・ファンドマネージャー、バンガードのブランド効果もあってか、数々のロボアド・ランキングの上位常連だ。

投資の選択肢や資産配分には定評があるが、運用資産の下限は5万ドルと敷居が高いのが難点だろうか。ロボット任せではなく人間のアドバイザーが管理・対応してくれると考えると、0.30%という手数料はお得だろう。スコアは8.0。

6位 チャールズ・シュワブ・インテリジェント・ポートフォリオズ——大手の信用が光る、豊富なETFが魅力

米国の大手投資企業チャールズ・シュワブが提供するロボアドサービス、チャールズ・シュワブ・インテリジェント・ポートフォリオズ(Charles Schwab Intelligent Portfolios)。チャールズ・シュワブが運用する100種類以上のETFの中から、好みにあったものを選べる点が魅力だ。

最低投資額は5000ドルとウェルスフロントやベターメントよりはるかに高く設定されているが、手数料は無料。大手投資会社として培った信用も消費者に安心感を与える。チャールズ・シュワブは数年前からすでに通常のETF取扱いを無料化している。スコアは8.0。

5位 SoFi ウェルス・マネージメント——人間のアドバイザーとロボットの融合

融資スタートアップとして不動の地位を築いたSoFi が放つウェルス・マネージメントサービス。SoFi ウェルス・マネージメント(Wealth Management)は人間のファイナンシャル・アドバイザーがロボアドをサポートするというシステムだ。

最低投資額は100ドルだが口座を維持するためには残高500ドルが必要となる。下限額は毎月100ドルを投資することで、徐々に低くなる。

運用額が1万ドル以下または融資サービス利用者は無料で利用可能。運用額1万ドル以上の顧客の年間手数料も0.25%と割安だ。スコアは8.5。

4位 M1ファイナンス ——完全無料で試せる「長期的かつ近代的な資産運用」

M1 ファイナンス(Finance)は長期的で近代的な資産運用を意図したロボアドサービスを提供。3位のワイズ・バイヤン同様、すべてのサービスが無料で利用できる。

設立者兼CEOのブライアン・バーンズ氏は、「消費者のお金が手数料などに消えるよりも、さらなる投資など将来を形成する支出に流れる方がよほど経済効果が高い」との思想の元、「未来の金融サービスは無料化されるべき」と強調している 。

ベターフロントが採用している「現代ポートフォリオ理論(MPT/投資におけるポートフォリオの収益率の平均 (期待値)と分散のみをコントロールする理論)」を活用し、低リスク・高リターンの実現を目指している。最低投資額はゼロ。2015年にシカゴで設立された。スコアは8.0。

3位 ワイズ・バンヤン ——世界初、アドバイス完全無料制で「投資=高額報酬」の壁を破る

「世界初、完全に無料で利用できるロボアド」をうたうを実現したワイズ・バンヤン(WiseBanyan)。

「投資は人としての権利であって一部の層にかぎられた特権ではない」というスローガンを掲げ、多くの人が投資を躊躇する原因の一つ「高額な手数料」を排除。手数料で巨額の利益を上げているほかの資産運用企業と異なり、「追加商品やサービスの販売のみを利益源にしている」点をアピールしている。

最低投資額は1ドル。2013年にニューヨークで設立された。スコアは8.0。

2位 ベターメント——「最も初心者フレンドリー」なロボアド?

ウェルスフロントとともにロボアド市場をリードするベターメント(Betterment)。「最低投資額の下限なし、年間手数料0.25%(プレミアムメンバーは0.40%)」でウェルスフロントに対抗している。投資におけるポートフォリオの収益率の平均 (期待値)と分散のみをコントロールする「現代ポートフォリオ理論(MPT)」を活用し、低リスク・高リターンを実現。

モバイルデバイスからも簡単にアクセスでき、投資管理ツールも非常に使いやすい。「最も初心者フレンドリーなロボアド」と評判が高い。2008年、ニューヨークで設立。スコアは9.0。

1位 ウェルスフロント ——20億ドルを運用する大御所 融資サービスも開始

2008年にカリフォルニアで設立されて以来、ロボアドの大御所的存在に急成長を遂げたウェルスフロント(WealthFront)。現在世界中で20億ドルを超える資産を運用している。

500ドルから気軽に投資でき、1万ドル以下の運用であれば手数料は無料。年間アドバイス料も0.25%とロボアドの中で最も低い。投資管理ツールの充実度や使いやすさも人気の秘密だろう。

最近では10万ドル以上の大口顧客を対象にした融資サービスも開始。年利3.25〜4.50%で運用資産の最大30%の融資を受けられる。スコアは9.5と限りなく満点に近い。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)